とんだ大物-4
海斗は息を乱して跪き叫んだ。
「マジかー!!俺、ドザエモンのオッパイ揉んで興奮したんかー!?」
自分が恐ろしくなる。少しうなだれた後、恐る恐るゆっくりと死体に近付く。
「わざとじゃないんだ!信じてくれ!だから呪わないでくれ!」
よほど呪われるのが怖いようだ。呪わないように必死で土下座して頼み込む海斗だった。
砂に頭をつけて土下座している時だった。何やら音が聞こえた。
「スー、スー…」
そんな微かな音だ。
「何だ??」
海斗は水死体の顔に耳を寄せてみた。すると微かだが、その音は水死体の口から発せられていた。
「このドザエモン、息してやがるぜ。変なドザエモンだぜ。」
そう言って一瞬考え直した。
「はっ?息してる…?じゃあ生きてんのか!?このドザエモン!?」
生きていたらドザエモンではない事すらおかしいとは思わないぐらいに混乱していた海斗は再び顔を寄せてみた。するとかなり弱っているが、呼吸をしている事に気付く。
「えっ?マジ??生きてんの…?」
海斗は驚きその元ドザエモンの顔に視線を向けた。次の瞬間、完全に一瞬、心臓が止まった。なぜなら元ドザエモンの目が開き、その目ん玉と視線があったからだ。
「うぎゃあああ!」
腰が抜けた。再び尻餅をつき怯える海斗。
「で、出た…!呪わないでくれ!!」
もはや生きている事も忘れブルブル震えていた。しかし目を開けたといえ全く動かない元ドザエモン。海斗は次第に落ち着きを取り戻す。
「って、だから生きてんじゃんかよ!」
呪いの心配がなくなった瞬間、ようやく自分のした事が死体回収ではなく人助けであった事を認識した。
「お、おい!大丈夫か!?」
生きた人間だと分かれば怖いことはない。海斗はその女性に寄り体を揺する。そしてその女性が初めて口にした言葉は実に意外な言葉だった。
「あれ…、私…、死ねてないの…?」
「はぁっ?」
死ねてない…、その言葉が引っかかったが、すぐに自殺を計ったのかもしれないと思った。
「ああ。生きてるぜ?釣りをしていた俺が偶然おまえを釣ったんだ。そんで助けてやったのさ!」
自慢気に言った海斗。
「あなたが助けたの…?」
「ああ。そうだよ。」
爽やかな笑顔で親指を立てた海斗。しかしいきなり女性は体を起こし海斗の胸ぐらを掴んで激昂する。
「な、何で助けたのよ!!余計な真似しないでよ!!」
突然鬼の形相で怒りを露わにする女性に怯む。
「な、何なんだよ!余計な真似ってよー!俺だって人間なんか釣りたくなかったわ!!」
「だいたい何でこんな台風の中釣りなんてしてるのよ!?」
「そんなの俺の勝手だろうが!?」
海斗もすっかりヒートアップしてきた。