可愛いお姫様-3
思い直して正騎士の礼を返し、淑女に対する挨拶をする。
「お招きありがとうございます、ジェノビア姫様。私の贈り物は喜んでいただけましたか?」
「はい。皆様も大変喜んでいましたわ」
ジェノビアの答えにデレクシスは少し寂しくなった。
他の人間の感想など聞いていないし、正直どうだって良いのだ。
彼女が喜んでくれたかどうかが気になる。
しかし、彼女はテオドアが連れてきた魔物少女に興味を移していた。
(ふむ……大して喜んではくれなかった……という事か……)
ジェノビアは感情を素直に表現するタイプなので、そういう事になる。
ならば遅刻のお詫びをまた考えなければなぁ、とデレクシスが考えているとファン国王に呼ばれた。
2人が正式な挨拶を交わしている背後で、彼女が立ち去る気配がする。
その儚い存在感に、非常に気分が沈んだデレクシスだった。
「ジェノビアは大人になったんだねえ」
客室に通され、まったりしている所にランスロット王子が来たので少し愚痴る。
「そうですか?」
ランスロットは成人のお祝いにと持ってきたクラスタの植物をニマニマと眺めながら気の無い返事をした。
「前来た時は、おじ様おじ様〜♪って来てくれたのになぁ……成人したらおじ様は厄介払いかねぇ」
そうだ、ジェノビアは世界の中心国ファンのお姫様なのだ。
成人したからには嫁ぎ先も直ぐに決まるだろう。
いつまでも自分だけの可愛いお姫様で居てくれる筈がないのだ。
寂しい気持ちで溜め息をついていると、お茶を準備してくれたリュディヴィーヌがお菓子をテーブルに置いて話に割って入る。
「……姫様は……変わってませんわ」
「そうだねえ、今朝もどのドレスにするかで大騒ぎだったしねえ」
はて、彼女のドレスはどうだったかな?とデレクシスが頭を巡らせていると、リュディヴィーヌにペシッと額を叩かれた。
何をするんだい?と彼女を見ると、少し厳しい表情で同じ事を言われる。
「姫様は……変わっておりません」
それだけ言ったリュディヴィーヌは、失礼しましたと部屋を出ていった。
「変わってないかい?」
「私は、変わってないと思いますよ?ただ……」
「ただ?」
「デレクシス殿には変わって欲しいな、と思います」
ランスロットの言葉の意味が分からず、デレクシスがキョトンとしていると彼は苦笑して肩をすくめる。