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LOVE AFFAIR
【アイドル/芸能人 官能小説】

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エピローグ-1

「受付に女が一人、部屋に二人死んでる。で、心身喪失の男が一人残されてるってのはどういうこった?」
 ベテラン刑事は部屋を見回しながら呟いた。
 ラブホテルの室内じゅうを鑑識が調べている。受付で一人の中年の女が死んでいるのが見つかり、各部屋を捜査したところ、この部屋から更に二体の死体が見つかった。
「凶器は……、すぐにわかりました。……S&W M360Jです。発砲された弾丸が残ってました」
「あーあ」
 若い刑事の言葉に、ベテラン刑事は肩をすくめた。予想していたとおり、という表情だが、悔しげな舌打ちを鳴らす。
「使われたってことか」
 三日ほど前にK県O署の武器庫から拳銃一丁が無くなっていたが、K県警はしばらくその事実を隠し独自に探索を進めていた。だが当事案が発生し凶器が同型の拳銃だということが知れると、やっと警察庁にその事実を報告した。警視庁・各県警に通達が回り、発表のタイミングと方法を模索しながら並行して広域緊配が敷かれている。なるべく秘密裏に捜査を行いたかったが、受付の女が死んでいるのを見つけたのが出入り業者とあっては、発生の事実はすぐにマスコミに嗅ぎ付けられた。
「記者、だいぶ来てるのか?」
「はい。さっき外を見たらいっぱい来ていましたよ。何せこんな街中で三人も死んだんですからね。しかも発砲事件で」
 もう一度ベテラン刑事は舌打ちをした。上職からは、上層部が会見で発表するまでは何も話すなと厳命が下っている。その会見はいつ開かれるかわからない。マスコミの奴ら、特に大手ではない個人記者などは少しでもいい写真、談話を手に入れようとしつこい。彼らの前で沈黙を守って払いのける労力を考えると気が重かった。
「……受付で死んでいたのは木本とし子、54歳。このラブホテルの経営者ですが、実質このホテルは指定暴力団江端会のフロントのようです。おそらく部屋で死んでいた二人もその繋がりかと思います」
「そうだろうよ」死体の男たちはいかにも組織メンバというような風体だった。「……あのキチ……、いや、おかしくなってた男は?」
「今のところわかっていません。身元が分かるものは全部持ち去られていました」
「本人があれじゃぁなぁ……。目撃者としても使えんか」
 面倒そうだな、とベテラン刑事は溜息をつく。いずれにせよ警察の銃が使われて三人もが命を落としたとなれば、警察は沽券にかけて大々的に捜査をするだろう。だがいまだに会見が開かれない理由は、事件発生場所の警視庁と、凶器の出元であるK県警に繋がる警察庁が綱引きをしているからだ。とりあえず初動捜査でベテラン刑事たちが現場に派遣されているが、どこでもいいから引き取ってくれ、と考えていた。
「……で? K県警の、その、何とかっていうのは見つかったのか」
「村本です。まだですね。それが……」
「どうした?」
「いえ、その村本ですが、実はあのK県の村本誠二郎の次男でして」
「誰だ、それは」
 K県にゆかりのないベテラン刑事は、「あの」と言われてもピンと来ないから、不機嫌そうに若い刑事に説明を求める。
「要は名士、ってやつですよ。大手地場企業の社長、いや、元社長だったかな。市会議員も務めていたんで政治にもパイプがあるようで……。K県警の友人に聞いたら、政治方面からも色々横槍が入っているそうですよ」
「本当に面倒だな」
 追加の厄介事を聞いて、思わず口に出してしまった。
「……やっぱり、村本でしょうかねぇ?」
「そりゃそうだろ」
 拳銃が無くなった翌日から無断欠勤で行方知れず。第一容疑者になるのは当然だった。


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