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LOVE AFFAIR
【アイドル/芸能人 官能小説】

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13.愛の中にある幾許かの狂気-11

 竜二が重そうな足取りでドアの方に向かう。タバコが吸いたいな、そう思った健介も身を起こそうとしたが、射精の心地よさと完全に脱力している悠花の重みで容易く起き上がることができなかった。
「おっせぇぞ、ババア」
 部屋の入口の方から声とドアを開ける音が聞こえたかと思うと、タン、と電気スタンドか何かが倒れたような音がする。
「何だ?」
 少し遅れてドサリと崩れた音が聞こえると、様子がおかしいことに気づいた健介が改めて悠花をどかして起き上がろうとした。
「うう……」
 だが唸った悠花の長い手足が絡まるように覆ってきているからもたついた。そこへ突如駆け込んでくる足音が聞こえる。目線を向けようとするが悠花の体が邪魔になって見えない。ベッドのスプリングが跳ねたかと思うと、悠花の体が薙ぎ倒されるように脇に消える。電灯の明かりに視界を白く塞がれたあと、黒い影が自分を覆って眩さが弱まってくると同時に額に硬い物が当たった。
「お、おま――」
 村本は何も言わず引き金を引いた。額に開いた穴から噴出した血潮でベッドを染めながら、喉に溢れてくる嘔吐を鳴らして健介は動かなくなる。
「悠花ちゃん……。悠花ちゃんっ」
 村本がベッドに横たわった肩を揺すると、悠花が虚ろに目を開いた。
「あ……」
「ごめんよ、悠花ちゃん。俺のせいで……」
 悠花は横座りにベッドに身を起こすと、村本を不思議そうに見た。
「ど、どうして……」
「なかなか来ないから……。実は、悠花ちゃんの携帯にGPSアプリ入れてたんだ。調べたらココだったんだけど、何だか嫌な予感がして……、コレを持ってきてよかった」
 と村本は手の中の黒光りする拳銃を見せる。
「……ひっ」
 だんだんと意識が真っ当になってきた悠花が何気なく目線を移した先に、目を開いたまま額から血潮を流す健介の姿があった。どう見てもすでに事切れている。竜二の姿は無いが、こうして村本と話しせている状況から、既にこの世から消えているだろうとすぐに分かった。
「し、し……、知り合いだったの?」
「いや……、知り合いというか。いや、そんなことはどうでもいいんだ。悠花ちゃん、早く逃げるんだ」
「逃げる?」
 悠花は突然の状況変化に頭も体も追いて来ずに、ぼんやりと村本を見ている。
「俺、……け、警察官、だから。受付の女の人も殺しちゃったから、すぐに誰かに見つかって、ここに警察がくる。俺の大事な悠花ちゃんを巻き込みたくないんだ。だから逃げてよ」
「悠花ぁ……、はる……、かぁ……」
 ソファのほうからバゼットの声が聞こえて二人はそちらを見た。バゼットは殆ど白目をむきながら、何連発もした精液の染みが前面ベットリと広がった腰を前後に振りながら、更にズボンの中で新たな射精をしていた。
「……あいつは?」
「……。……誰か知らない」
 マトモな状態ではなかった。完全に精神が崩壊している。壊したのは自分だ。癒しがたい傷は心に一生残るだろう。あそこにいるのは、もうバゼットという人間ではないのだ。
「いや、そんなわけないよ」
 村本がバゼットを詮索しようとするのを制して、
「あんた……、……む、村本さんはどうするの?」
 悠花は二人から聞いた名を口にした。こんな時であるのに、村本は大好きな悠花から本名を呼ばれて何だか胸が潤うような感動を覚える。
「……俺もどこかへ行くさ。とにかくっ、早く服を着て……」
 村本がバスルーム近くに脱ぎ捨てられている悠花の衣服を取りに行こうとする袖に、悠花はやおら強くしがみついた。
「……私も、連れてって!」
 驚いた表情で村本は悠花の顔を見た。精液がこびり付き、その上からさらに健介の流した血潮が飛んで斑点を作っている。そんな凄惨の跡を残しながら、憧れて止まなかった人気モデルの顔つきは、ファンとしてメディアを通してのみ見ていた顔よりもずっと美しい。大好きな瞳が真摯に自分を見つめてきていた。
「俺は逃げ切れないよ、きっと」
「死ぬつもりなんでしょ? ……、……私も一緒に殺して」
 つい何分か前までは、二人の男に犯されて絶頂に達していたのだ。体を弄られるとすぐに性楽に負けてしまう女になってしまった。もうこの先、モデルやグラビアの撮影で笑顔を作ることなどできない。いや、仕事がどうこうではない。女として、人としての尊厳を今日この部屋で失い、淫乱な獣に堕ちてしまったのだ。
「できないよっ! そんなの……」
「いやっ! とにかく連れて行ってっ! ……あなたのせいでしょ?」
 その元凶たる村本に責任を取らせるのだ。この体を面倒見るのも、消し去るのも、もうこの男しかいないのだから。





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