女であることを忘れていた女-6
いろいろ操作しているうちに、さっきの女は“勅使河原(てしがわら)えみる”というAV女優で、さっきの画像は一番最近に購入したと思われる動画のサンプル画像の一つであることがわかった。
あ、ちなみにタイトルは「えみるの愛して愛されるセックスライフ」っていうしょうもないタイトル。
他にも、「童貞キラー 人妻ルカ」とか「夜はあなたと乱れたい 〜田丸まどかの新婚日記〜」とか、センスの欠片もないアホなタイトルの列挙に苦笑いになった。
女心としては、自分のパートナーが別の女の性行為を見て興奮していることを知ってしまったら、あまり気分がよくないのは正直ある。
でも、さっきまでの不倫の疑いがあった時の胸が張り裂けそうな想いに比べたら、AVを観るくらい、どってことない。
むしろ、浮気しないでこの程度で収めてくれた輝くんを褒めてあげたいくらいだ。
そう頭ではわかっているものの、かなりの数の動画の購入履歴に若干引いてる自分もいる。
付き合っている時、「エッチなDVD持ってる?」なんて聞いたことがあるけれど、その時は片手で収まるくらいしか保有していなかったくせに、この購入履歴は二桁はある。
そんな数々のタイトルを眺めながら、私は
「輝くんってこんなにムッツリスケベだったっけ?」
と、一人ごちた。
輝くんは、付き合っている時も、新婚当時も、それなりにセックスに積極的だった。
若い頃は野球少年だった輝くんは、基礎体力がついてるからか、こちらの方もえらく体力があって、新婚時代は生理以外はほぼ毎晩求められていた。
そんな彼は、いつも私を求めてくる時は甘いキスを皮切りに、ゆっくり時間をかけながらムードを作ってくれたっけ。
もう遠い昔の話みたいに、目を細めて遠くを思わず見てしまう。
そして、ふと過った小さな疑問。
そんなエッチに積極的な輝くんが、なんでコソコソエロ動画で自己処理なんてしているんだろう。
叩き付けたフォトフレームが視界に入り、何の気なしにそれを拾い上げて、じっと見つめる先には、愛娘の眠った顔。
ああ、そうか。
それを見て、自ずと答えが唇からこぼれ落ちた。
「そういえば、輝くんと随分長いことエッチしてなかったな」