女であることを忘れていた女-5
勝手にパニックになって暴れた自分が猛烈に恥ずかしくなった。
「ごめんね、輝くん……」
なんだか彼に対して、申し訳ないって言葉しか出てこない。
彼は仕事が終わったらまっすぐ帰ってきてるし、スマホも無造作にリビングに置き忘れたりするし、瑠璃がゲームをやりたいとせがめば、ためらいなくそれを渡す。
土日は家族一緒だし、友達や趣味に時間を費やすよりも、いつも家族を選んでくれる輝くんが、そんなやましいことするわけがないじゃないか。
それを、私ったら……。
「……元に戻しとこ」
罪悪感に襲われた私は、ただそう呟いた。
そうする他、何もできないのだ。
こういうものは、他人に知られたくないもので、私が見なかったことにすれば、いつもの輝くんでいられる。
だから、私はパソコンなんて触っていない、何も知らないことにしていないといけない。
とにかくさっきの画像を表示させて、これを見る前の状態に戻さないとと、私は戻るをクリックしようとした。
けれど、“Myページ”と言う文字が目に飛び込んで、思わずマウスを握る手が止まる。
これは、テレビでもCMをしている大手レンタルのサイトだ。
ネット版レンタルビデオ屋のイメージばかりが強かったそのサイトだけど、トップページをよく見ると、動画配信もしているようだ。
輝くん、もしかしてエロ動画を買ったりしてたのかな。
ぶちまけられた大量のティッシュくずを見ると、ムクムク好奇心が沸き上がってくる。
押し寄せてくるそれに負けてしまった私は、罪悪感に襲われながらも、結局それに勝つことができず、ついにMyページをクリックしてしまった。
会員登録してなければ、たまたま興味本位で覗いただけだろうと思えるから。
登録してるかどうかだけを確かめるだけなんだから。
そう言い聞かせるようにクリックすれば、表示されるログイン画面。
IDとパスワードは記憶させていたみたいで、ログイン画面の表示と共に黒丸で伏せられた形で表示されていた。
そして、ログインと表示されている所をクリックすると。
「……やっぱり」
どこかでそんな気はしていたけど、やっぱり目の当たりにすると苦笑いしか出てこない。
そこには、“小野寺輝政さんのページ”と一番上に表示された、輝くんのMyページが表示され、購入したと思われるたくさんのアダルト動画のタイトルがズラリと並んでいた。