嗜虐心-1
3 嗜虐心
「おい」
低い声が体育館に響いた。さっきまで先輩たちに対して放っていた声とは明らかに質が違う。自分で出しておいて、こんなに冷淡そうでドスのきいた声が出せることに、タツミは自分で驚いた。
「は、はい」
佑香里の声もそれに合わせて変わったような気がした。タツミの声の豹変ぶりに驚いたような怯えているような、そんな少し威勢のない声だった。
「なんだかよく分からないけど、俺は佑香里よりも序列が上だからお前に何をしてもいいんだったな」
「はい、そうです……」
「何でも言うことをきくって言ってたよな」
「はい、言いました……」
「ふふん」
少し愉快そうな笑い声が漏れた。今までいろんな妄想をしてきて、そのどのシチュエーションをなぞっていくかをタツミは考えている。
「絶対服従をするということは、佑香里は俺の奴隷になるということだな」
「は、はい、そうです」
「なら俺はご主人様ということだな」
「そうです、ご主人様です」
「それじゃあ俺のことはご主人様と呼べ」
「え、あ、はい。分かりました、ご主人様」
妙にこなれている感じがする。もしかしたら、他の先輩にこういうことをされたことがあるのかもしれない。
「じゃあ改めて奴隷宣言でもしてみろ」
「は、はい」
少し戸惑ったような素振りは見せるものの、特に呆然としたりする様子はない。
「私、金沢佑香里は小林タツミ様の奴隷として、絶対服従を誓います」
突然奴隷宣言なんて言ってみても、そつなくこなされてしまっている。ここでどうしたらいいのか分からないといった感じになってくれれば、どなりつけていじめることもできるのだが、こう素直に奴隷宣言をされてしまうと逆に面白味がない。タツミは少し不機嫌になった。
「よし、じゃあ服従の証を見せてもらおうか」
だがその分、服従させられる状況に慣れてしまっているらしい佑香里を困惑させてやるという思いが強まっていく。少しきついことをさせてでも、この女に許しを乞わせてみたいという欲望が湧いてくる。
「おら」
タツミはようやく佑香里の頭から足を下ろすと、それを佑香里のすぐ目の前に置いて突き出した。
「舐めろ」