フライング・スタリオン-7
2月になって、洋子からメールが来た。
<昇さま
私の早とちりでした。生理が始まりました。看護婦の癖に、自分のことになると、まるで素人です。ずっと生理は順調で狂ったことが無かったので、期待しすぎたようです。ごめんなさい。
お騒がせしました。
洋子>
折り返し、昇の返信。
<洋子さん
僕も、残念に思います。しかし、これが最後とは思いません。これからのことについて、相談をしたいので、予定通り4月にはそちらに参ります。
会うのを楽しみにしています。
昇>
洋子からの返信。
<昇さん、
暖かいご返事を有難うございました。何時もそうしてやさしくして頂いて、嬉しいです。お会いできるのを楽しみに、お待ちしています。
予定が決まり次第、お知らせください。ゆっくりお会いできるように、こちらの準備をしておきます。
ああ、早くお会いしたい。
洋子>
13.
横浜市内の洋子の部屋は、勤務する病院から歩いて5分ほどのマンションの6階にある。
ホテルを取らずに部屋に来て欲しいという洋子の勧めで、昇は空港から直行した。
再会の熱い口づけをして、シャワーを浴びた後、二人は洋子の支度をした夕食のテーブルに付いた。
冷えたロゼワインで、再会の乾杯。
「洋子さん。今日も綺麗だね」
「あら、もう酔ったんですか」
「君は何時も綺麗だよ」
「有難うございます」
「子供のことだけど、君の気持ちが嬉しかったよ。洋子ちゃんがそこまで思ってくれるなら、いっそ、僕と結婚してくれないかなあ」
「でも奥様が・・・」
「もちろん、直ぐに入籍はできない、だけど、時が来たら必ず手続きをするから、前倒しというのも変だけど、事実上の夫婦になって呉れないかなあ。僕が洋子ちゃんと日本で夫婦生活ができれば、オーストラリアで安らかな気持ちで、上さんの面倒が見られる。今の状態では、ストレスが溜まって、却って上さんが疎ましくなってしまうんだ。早く死んでくれなんて思いたくない。
僕は聖人でも君子でもない、生身の男なんだ。愛を分かち合えるパートナーが欲しいし、子供も欲しい。僕は君が好きだ」
洋子は、一気に話を続ける昇の目を、じっと見つめていた。
「有難うございます。私は、自分ひとりでも昇さんの子供を生んで育てる積もりでいたんですから、そうして頂けたら嬉しいわ」
「シドニーと横浜の遠距離交際になるけれど、今時、単身赴任で来ている駐在員も少なくないからね、何とかなるよ」
話が済んで、二人はホット一息ついた。
チーズに生ハムのオントレに続いて、300グラムのTボーン・ステーキがテーブルに並ぶ。
「さあ、精力をつけて頑張ろう」
「頑張りましょう」
グラスを赤ワインに変えて、乾杯。