〈狂宴・中編〉-9
(あ…あの優愛が……)
未だ曾て、これ程までに激情を表した優愛の姿を、景子は見た事が無かった。
気弱で引っ込み思案で、自分より他人の意見を優先してしまう少女だった。
景子に頼り、美穂に甘え、笑顔と泣き顔しか見せてはこなかった……。
(や…やめろッやめろおぉッ!!)
『イヒヒヒ……優愛ちゃんはぁ、レイプで感じて濡らしちゃった景子お姉さんや美穂ちゃんと違うんですってぇ。不感症なんですってぇ』
タムルは、クスクスと笑いながら優愛の胸元に手を伸ばし、上目遣いで景子と視線を重ねた……奈和を汚され美穂を侮辱された耐え難い怒りは充分に解るも、その“感情”だけで戦える相手では無いという事を、景子は身をもって知っているのだ……。
『分かってるの……優愛ちゃんは男に「感じてる」って言われるのが嫌だって事がね?汚くて野蛮な男に触られて……ヒヒ……悦んでるなんて思われたくないものねえ?』
「……!!!」
短絡的な思考のもと、身勝手な論理を振りかざし、美穂の人権を無視した強姦魔共に対する優愛の怒りは、この理由に行き着いていた。
女は快感さえ与えれば、勝手に悦ぶ馬鹿な生き物。
思春期を迎えたばかりの時に起きた美穂の悲劇は、優愛から異性への興味を奪い、近付いてはならない危険な物という認識を持たせた。
そして、拉致・監禁・強姦という今の一連の卑劣な事件で、その認識は決定的なものとなった。
(お、男なんか……汚い獣じゃないの!!)
タムルの掌は優愛の胸肉を包み、押されるように飛び出た乳輪と乳首に指先を這わせた。
……が、さっきのような悶えは見せず、身体は固まったかのように沈黙したままだ。
『あら〜?ピクンともしないなんて……これじゃタムルつまんな〜い』
僅かな反応も見せまいとする優愛を嘲るように、タムルはふざけながら指先で擽っていった。
乳輪の外周を丹念に擦り、固くなってしまった乳首を優しく弾く。
唸り声すら聞こえてきそうな憤怒の瞳を笑い、タムルは微笑みを浮かべて優愛の泣き顔を覗いた。