〈狂宴・中編〉-8
『……なに、その目……悔しい？……ヒヒヒ……言われっぱなしで悔しいんだ？』
勝ち目が無いと知りながら、美穂の名誉の為に自らを奮い立たせる優愛を、タムルは軽蔑と愉悦の混じった瞳で見た。
この貧弱な小娘でも、姉妹への心無い台詞に怒り、戦おうとする気概を持っている。
その気性は景子と同じであり、実に虐め甲斐のある牝だ。
『景子お姉さんは、ちょっとだけ遊んであげたら、「いやん、景子とっても気持ち良いのぉ」って、直ぐにオマ〇コから汁を垂らしたわよ？あの変態豚の妹なら、やっぱり変態なんじゃなくってぇ？』
「……ぐぐ…ッ」
誇りを傷付けられた優愛は、涙が零れるのも構わずタムルを睨んだまま動かない。
『そうかぁ……変態なのは景子お姉さんだけで、妹二人は違うってコトぉ？……フフッ…でも、今の貴女を見てるとそうは思えないんだけどぉ？』
「あ"う"ッ…!?」
タムルは右手を離すと再び胸肉へと伸ばし、恥じらい無く天井に向かって勃った乳首を摘まみ、クリクリと弄った。
優愛はもう屈辱的な姿は見せまいと身体を強張らせ、呼吸を止めてまで“反応”を殺しに掛かった。
充血した瞳は臨戦体勢のまま、瞬きすらせずタムルを睨む。
その悲哀しか無い凛々しさは、景子には無かった魅力であった。
『……なぁに？その「私は感じてない」ってアピールは？』
タムルは立ち上がり、優愛から距離をとった。
まだ優愛は見上げるようにタムルを睨み、歯向かう気力に満ちている。
その態度が、この禍々しい欲望を増幅させるとも知らずに……。
『景子お姉さぁん、美穂ちゃんはレイプされて悦んだはずって言ったら、優愛ちゃん怒っちゃったみたい』
「ッ…!!!」
敢えて景子を怒らせる台詞をタムルは喋った。
美人姉妹を虐める格好の“ネタ”が、美穂なのだから。
しかも、生意気にも優愛は、タムルを睨んで戦う姿勢を見せたのだ。
男を恐れ、女に逃げた女に、下に見られる謂れは無い……御主人様たる自分こそが支配者なのだと思い知らせる必要が、タムルにはあるのだ。
御主人様からの如何なる理不尽な責め苦にも、家畜である牝豚は許しを乞う以外は許されなく、その生意気な自己主張である〈怒り〉の感情など抱いてはいけないのだ。
『見てぇ、この顔……こんなにプンプン怒るなんて、酷いと思わない？』
景子に向かって話すタムルを、まだ優愛は見上げて睨んでいる。
それは、景子が見た事が無かった、悲壮な覚悟を決めた妹の凛とした顔であった。