11.転獄-7
「おい、暴れんなよ? あんまり暴れると、いくら瀬尾悠花だって、ブッとばしてやるぜ? 俺はガキのお前より、オトナになってスケベな体になったお前をレイプしてやんだからなっ」
背後から凄みのある声で、更に強く腕を捻り上げてくる。
「痛いっ!!」
「やめろっ! おいっ! 聞けっ!」
悲鳴を上げる悠花を救おうとするバゼットの声も虚しく、竜二は腕の痛みを緩めようとはしなかった。
「まあ、今から俺がゴーカンしてやって、カレシの前でエロ女の本性晒してやっからよぉ? な?」
「そんなわけないっ! ふざけんなっ……!」
痛みに顔をしかめながらも、見えない背後を睨みつけて悠花の口調が乱暴になっていく。侮辱されたことによる怒りではない。バゼットの前で暴かれることを防ごうとする、半ば演技が混ざった反応だった。
「おらっ、パンツ見せろよ。見られんの好きなんだろ?」
と、竜二が遂に悠花の体に手をかけ始めた。片手で腕を押さえつけながら、もう片手でマキシ丈のカーディガンの裾を割って、ミニスカートの裾を掴みにかかる。
「ちょっとっ! やめてっ!」
悠花も自由な方の手で己の裾を掴んで力の限り押し下げるように引っ張って抵抗する。
「あ? 何だぁ? その手は。離さねえと腕折っちまうぜ?」
と、捻り上げている腕を手首に持ち替えて、更に曲がらない方向へ捻ってくる。
「あっぐっ! いたっ……。痛いっ!! 離してっ……、離せ!!」
「スカートから手、離せよ」
「やめろ……。お前が離せよっ! 死ねっ! 絶対イヤだっ!!」
「あ? 何だこの女。ちょっとカワイイからって、何調子乗ってんだっ!」
竜二に怨視を向けながらも、バゼットは二人のやり取りを驚きながら聞いていた。見たことのない悠花の様子だった。ここまで乱暴な言葉が出てくる様は想像すらしてこなかった。
ベッドから鑑賞していた健介も同じように悠花の様子に注目していた。たかがスカートを捲られるだけなのに、狼藉者相手にもともと強気な性格であっても、初対面の相手にここまで言葉遣いで人気商売の体面を崩して抵抗するのは何かあるに違いなかった。
「悠花ちゃん」
タバコを灰皿に押し消して、大型テレビのリモコンを手にとる。健介がリモコンを手にした瞬間、今まさに悠花の腕が折れるまで力を入れようとしていた竜二が、一転ニヤリと笑って押しとどめる。
テレビは黒い画面のままだったが、やがて、相変わらず罵声を発しながら身を激しく動かしている悠花がピタリと止まるほどの音量で声が響いた。
『は、悠花ちゃぁんっ、ほら、出すよぉ。つ、次は、オ、オッパイでさせてぇっ!』
『んっ……、はんっ……! ど、どうするの……?』
ギョッとなって顔を上げて画面を見る。でっぷりと腰肉が弛み切り、表面を薄汚い体毛が覆う醜い体。前かがみになって、髪のかなり薄くなった脳天や、穢らわしいヒゲ面の表情はあの男に間違いなかった。そして彼が覆いかぶさっているのは、四つん這いでお尻を突き出して挿入を受け入れている悠花だった。
(隠し撮り……!)
この二人が全てを知っている合点がいった。ベッドトップが接している壁に据え付けられた鏡が目に入る。その画面の撮影角度から、それがマジックミラーで、向こう側から撮影されていたに違いない。ここで抱かれた時のいつごろのシーンか、何度も絶頂を味わされた中、全く憶えていない。だが、こうして改めて映像として見ると、村本に犯されている女、つまり自分はその男茎に悦び、快楽に屈した猥褻な表情をしていた。
『ああ、イク……、イクッ……!』
村本が男茎を引き抜くと、悠花の身を起こさせて膝立ちにし、そのすぐ前に爆発寸前の男茎を持ってくる。鏡のすぐ前で行ったせいで、大画面で全裸の悠花が最早素直に村本に導かれるまま、その整った胸乳に男茎の先端を挟み込んでいる姿が大写しになった。背を反らし立膝で村本にバストを突き出して捧げたようなポーズでそのスタイルの良さが一層強調され、しかも肌はそれまで何度も体中に浴びて、古いものは乾いて白斑に固まり、新たに浴びたものは粘液を滴らせながら照明に光っていた。
「け、消してっ!!」
大きな声で叫んだが、無情にもバゼットも見ている前で映像が続けられる。
『うおおっ!』
獣のような村本の雄叫びが、高級スピーカーから部屋に響くと、腰を突き出してくる村本の亀頭をバストで包み込み、胸の谷間から漏れるのを防ぐように手のひらで覆った中で爆発を受け止めていた。胸に精液を浴びている間、妖しく潤んだ瞳でウットリと村本を見上げている様まで映像に収められている。