１０．知らずに上がった舞台-9
「……」
二人の煎餅を齧る口が止まった。サングラスを取った女は、想像以上に整った顔立ちで、そこらにいる「可愛い女」のレベルを遥かに超えていた。
「ウソだろ？ 激カワじゃん……、……あっちぃっ！！」
竜二は信じられないといった表情で女の美貌に見惚れ、タバコの火を消すのを忘れて火種に指を触れていた。
「声出せねえの？」
「お、おお、忘れてた」
竜二は負った指先の火傷を舐めながら機材のスイッチを押す。少しくぐもっているがスピーカーより声が入ってきた。
「……ほらぁ、こんなビチョビチョにしてぇ……」
画面の中では村本が女に向かって、ブラ下げた下着を見せつけていた。女は瞼を閉じた眉根を下げ、下唇を噛んで顔を背けている。
「んんぅ……、おおっ……、おいしい……」
その目の前で村本は下着を裏返して広げたクロッチを鼻へを押し当て、胸を喘がせて息を吸い込みながら、もう一方の手で勃起したままの男茎を握ってしごいている。
「キメェ……。この村本ってやつ、ホンモノの変態じゃねぇかよ」
竜二は苦笑いをしながら新しいタバコに火をつける。
「やだもぉ……、やめてよぉ。キモい……」
モニタの中の女も目の前で身につけていた下着を嗅がれて、額に甲を付けて頭痛に苛むような姿で、苦悶の表情を浮かべている。
「……どうも、商売女ってわけじゃなさそうだなぁ」
健介は、竜二がテーブルの上においていたタバコを、一本くれ、というように手で拝んだあと、口に咥えた。
「くくっ、……こんなに濡らしてるってことはぁ、アソコもすっごいことになってるんじゃない？」
たっぷり下着を味わった村本は、再び悠花の肢体へと淫欲の矛先を向けてくる。
「……や、……何考えてんのよ」
悠花はスカートに手を入れられた時、何とか下着が体から剥がされるのを避けようとお尻を前に進めていったため、最終的に脱がされた時には仰向けになるほど浅めに腰掛けた体勢になっていた。村本は嗅いでいた下着を戦利品としてチノパンのポケットの中に丸めて突っ込み、そんな悠花の隣で身をかがめてその羞恥に朱に染まる表情をニヤけた顔で覗きこんでくる。
「俺ばっかり気持よくしてもらって悪いからね……。俺もいっぱい気持よくしてあげようかと思ってぇ」
と、差し伸ばされた手が、ピッタリと綴じ合わせた太ももに張るミニスカートの裾を摘んでくる。
「いいっ、……いいっ！ そんなのっ」
慌てて悠花も己がスカートの裾を掴み、村本とは逆に引き下ろすように力を入れる。最早この短いスカートの下は、悠花の下腹部を隠すものは何もなかった。一度犯されているとはいえ、こんな明るい所で、しかも下着をそこまで汚してしまった源泉を改めて見られるのは耐え難かった。
「んふっ……、見たいんだよぉ。こんなにパンティ汚しちゃったオマンコがどうなってるのかをぉ。ほら、手どけて？」
「いやっ……。お願い、そんなことしなくても、普通にすればいいでしょ？ 電気消してさ、……シャ、シャワーも……」
村本に犯される前までは悠花にとっては当然のことだった。いくら人並み以上に誇れる肢体とはいえ、明るい中で卑猥な眼で細部まで鑑賞されるなど考えられなかったし、体を交わす前は身奇麗にするのも自分にとっては当たり前だし、相手もそうすることが最低限の礼儀だと思っていた。
「この前は、シャワーも浴びずに生ハメでいっぱいしたじゃん。それにシャワーなんか浴びたら、せっかくのニオイが台無しになっちゃうじゃん？ ……ほら、いいから、手どけてよぉ。……あはっ、それっ……」
スカートを摘んでいない方の手で男茎の先端を握ると、乳牛の乳搾りでもするかのような手つきで握りこみながら少し動かすと、先端から飛沫が飛び散って、スカートの前面、悠花の手首、手の甲や指に向かって透明な粘液が雫となって降り注いできた。
「うわっ……、やっ、バカッ！ 最悪っ……」
慌てて悠花は両手を退避するが、手の甲には村本の体液をたっぷり浴びてしまった。しかも手を引いた後も村本は亀頭を弄りながらミニスカートに夥しい数の飛沫を降り注いでくる。
「やだっ、やめてよっ。汚いっ……」
「脚開いて？」
「……はっ？ ……、……ね、ちょっと、やめてってっ……！ どけたでしょ、手っ……。ほんっと、汚いっ！ マジでやめてっ」
悠花が手をスカートから離しても、自慰行為を続けて飛沫を下腹部に降り注ぎ続ける。小さな体液の雫が、黒のミニスカートの前面に無数の水滴を照明に光らせていた。
「んふっ……、おふっ……。じゃ、両足、肘掛けに乗せて開いて？」
「……はぁ？ 何言ってんの！？ そんなこと、するわけないっ」