熱砂の凶王と眠りたくない王妃さま-7
シャラフが一旦、身体を離して寝台の脇にあるチェストの引き出しから、綺麗な小箱を取り出す。
その箱がずっとそこにあり、召使がときおり新しいものと交換しているのは知っていたが、ナリーファは触れたことがなかった。
これは、王が使うものだと言われていたからだ。
荒い呼吸を繰りかえし、仰向けに倒れたままナリーファはシャラフの手元を見つめていた。
怖いけれど、身体も頭も痺れたようで、うまく動けない。今から食らわれる草食獣というのは、きっとこんな気持ちなのだろうか。
小箱の中に入っていた乳液のようなものが、両胸の硬くなった先端に塗りこめられた。
少しひんやりした液が、丁寧に塗りこめられていくうちに、熱くなっていたそこが、更にジンジンと疼いてくる。
「やっ! あ、あ……あっ!」
塗りこまれた熱に動揺して、鎮めようと両胸に手を伸ばすと、シャラフが満足そうに口端を吊り上げた。
「自分で弄っていていいぞ」
「ちっ、違います! あ、あああ!!」
訂正しようとしたのに、秘所のもっと敏感な突起にも液体が塗られ、背を弓反りにして悲鳴をあげた。
周囲の花弁にも執拗に塗りこまれ、まだ誰も受け入れたことのない道にも指を突き入れられて、あふれ出す蜜と薬液を混ぜられる。
「っあああ!!」
大きく濡れ音をたてて指を動かされたとたん、たまり続けていた快楽が唐突に爆ぜた。瞼の裏で火花が散り、一気に全身から汗が吹き出る。
きっと快楽に達したのだと、後宮に入る前に受けた説明で、なんとなく想像がついたが、思っていたよりはるかに鮮烈な刺激だった。
「いい子だ、ナリーファ。もっと感じろ」
汗の浮いた額へ、愛しそうに口付けが落される。
そのまま何度も昇りつめさせられ、ようやく小箱が空になった時には、ナリーファは息も絶え絶えだった。
「あ、あ、あ……」
全身が過敏になりすぎて、シーツが肌にこすれるのにさえも、ひどく感じてしまう。
それでも、これで終わりでないことくらいは知っていた。脚を大きくひろげさせられ、下履きをくつろげたシャラフが、のしかかってくる。
あれほど達しても、まだ疼き続けているる箇所に、太く熱い塊が、ゆっくりと割り入ってきた。
「あっ、あぅ……」
こじ入れられる塊は凶悪なほど太く蜜道を侵し、身体の中で何かが破れる感覚が伝わった。
それでも、沸きあがるのは頭の中が焼ききれそうな快楽だけで、痛みはまるでない。
全部納めてしまうと、刀傷のたくさん残る逞しい身体に、しっかりと抱きしめられた。
「ナリーファ……お前は、俺を救ってくれたんだ」
深緑色のきつい双眸に、溢れんばかりの愛情を込めて告げられ、快楽に蕩けかかっていた意識が呼びもどされる。
「即位してから、ずっと眠れなかったのに……。お前の声を聞いて膝で休んだら、不思議なほど気分が楽になって、気がついたら朝になっていた」
「陛……下……」
「寝台でくらいは名前で呼べ。敬称もいらん」
ほら、と促されて唇を舌でなぞられる。
「ぁ……シャ……ラフ……?」
ぎこちなく、呼びなれない名を口にすると、埋め込まれた雄が質量を増した。
「……ああ、そうだ」
熱砂の凶王と呼ばれる青年が、まるで宝物を手に入れた少年のように、嬉しそうな笑みを浮かべている。
今まで紡いできた全ての冒険物語の主人公よりも、彼は生き生きとして幸せそうに見えた。
体内の雄がゆっくりと動かされ、次第に律動を早めていく。
揺さぶられて、快楽に喘ぎ続けるナリーファの唇が、シャラフのそれで塞がれた。何度も浅くくっついて離れては、合間合間に命じられる。
「ナリーファ……お前にどんな欠点があろうと、一生離れることは許さん。……愛している」
ほとんど朦朧とした意識の中で、ナリーファは自分が「はい」と答えるのを聞いた気がした。
やがて快楽の大きな波に飲み込まれて、意識が完全に遠のき……。