熱砂の凶王と眠りたくない王妃さま-6
「……本気で言っているのか?」
とてもとても疑わしげな目をしたシャラフに、信じてもらえないのも無理はないと思うが、必死で訴えた。
「お願いです、陛下を傷つけたくはないのです……」
恐ろしい凶王の怒りをうけたくないと、ここにきた最初の日は、そればかり祈っていた。
そして乳母が小さい頃にしてくれたように、物語を紡いで王を寝かしつけることを思いついたのだ。
初めて寝所でナリーファと対面したシャラフは、とても不機嫌そうで、少しの失態でも斬り殺されそうだと、本気で恐ろしかった。
寝物語を聞かせたいと、恐る恐る申し出ると、黙って頷かれた。
上手くいくかは賭けだったけれど、幸いにも彼はすぐに眠ってくれた。
翌朝、彼の目の周りにできていた濃い隈は薄れ、まとっていた殺気のような苛立ちも消えていた。
そこで始めて、昨夜の彼は、疲労の極地にあったのだと気がついた。
乱れた国を立て直す仕事は、とても大変なのだろう。
あれ以来、シャラフは毎晩、ナリーファの物語を求めて膝でぐっすりと眠り、元気を取り戻して出かけていく。
それが、いつしかたまらなく好きになっていた。
自分は彼を寝かしつける役目だけで、抱かれるのは他の寵姫なのだと思うと胸が痛かったが、シャラフが立派に国を治められるなら、それでも良いと思った。
「わ、わ、私は、陛下が好きなのです! いつも元気なお姿を、お見送りしたいのです!」
目を瞑ったまま必死で訴えると、ふいに手首を押さえつける力が外れた。しかし、自由にはならなかった。
すぐに重い身体がのしかかって両腕で抱きしめられ、息もつけないほどまた唇を貪られたせいだ。
「ん、あふ……ぅ」
拒まなくてはと思うのに、頭の中が蕩けそうなほど気持ちよくて、絡まる舌の合間からうめき声が漏れ、唾液がこぼれて顎まで伝う。
ようやく唇を開放されて、涙の膜が張った目でシャラフを見上げると、これ以上ないほど上機嫌な笑みを浮かべていた。
「そうか。なるほど、なるほど……お前は俺が大好きでたまらなかったから、辛かったが拒むふりをしていたと」
嬉しそうに呟かれ、ナリーファはとっさに訂正をいれた。
「あ、いえ。ふりではなく、本当に拒んでいまし……たぁっ!?」
最後が悲鳴になったのは、下着の前を引き裂くようにはだけられたからだ。
「素直に、そうですと言っておけ」
ふるんと弾んで現れた乳房を、今度は直接に揉まれる。
「あっ! だ、だめ……」
「大丈夫だ。寝ながら動く気にもなれないほど、疲れさせてやる」
卑猥な笑みを口はしに浮かべながら、胸の先端を指で弾かれた。感じたことのない痺れが胸奥までつきぬけ、ナリーファは戸惑った悲鳴をあげる。
「まって……まってくださいっ! お話、します、から……ぁ!」
今度は尖った先端を口に含まれ、語尾が跳ねる。
「今日はいい。代わりに喘ぎ声のほうを存分に聞かせてもらう」
舌先で乳首を弾きながら、シャラフが物騒に笑う。濡れた先端に吐息がかかると、それだけでも奇妙な感覚が背筋を伝い、腰の奥にたまっていく。
「ひっ、あ……ぁ」
袖にモスリンの下着を絡ませたまま、覚えのない感覚にナリーファは裸身をくねらせる。胸にしゃぶりつく短いサンディブロンドに、力の入らない指先を絡めた。
「あれだけ可愛いことを言われて引けるか。観念して俺に抱かれろ、ナリーファ」
耳朶を甘く噛みながら、低い声で命じられる。
「我慢の限界なんだ。これ以上は焦らすな……お前をもっと厳重に閉じ込めて、壊すまで抱きたくなる」
「そ、そんな……あっ!」
膝の裏をもたれ、脚の片方を大きく胸もとまで曲げさせられた。
普段は決して人目の触れない太ももの裏や、その奥にある秘所までが空気に晒され、息が止まりそうになる。
「……さすがにまだ濡れていないな」
指先でそこの縦筋をなぞられ、ゾクリと全身が震えた。指の腹で敏感な蕾をそっと押されると、甘い痺れが下腹部に広がる。
「ん、はっ、ぁ……」
思わず、甘ったるい声が出てしまい、ナリーファは慌てて首を左右にふって敷布を握り締める。
何度も柔らかく刺激されるたび、じんわりと下肢が湿り気を帯びてくるのを感じた。
やがて指を大きく滑らされ、秘所全体に快楽の痺れが広がっていく。弄られる自分のそこから濡れた音が響く。
羞恥に身悶えていると、顎を掴まれて顔を覗き込まれた。
「ああ、いい顔になってきたな。こんな風に乱してやりたくて、仕方なかった」
凶悪で獰猛な肉食獣の顔をした王が、瞳に情欲を浮かべ、率直な欲望を告げる。
「初めてでも痛い目には合わせないから、安心しろ。馬鹿な心配事を考える暇もないほど、よがり狂わせてやる」