大好きな瞳-4
「おお〜」
「スゲー……初めてこんな近くで見た……」
「私、見るのも初めて」
学長魔導師が精霊と契約している『精霊人』なのは有名。
特に彼の相棒である精霊は火の精霊で、赤い火竜の姿をしており、巨大化すると雄壮なレッドドラゴンになる。
その姿は勇ましく神々しい程に美しい、という話は本当だったと新成人達は感動していた。
しかし、ジェノビアだけはドラゴンを見ていなかった。
ドラゴンが向かっている方向、南の方をジッと見ている。
南に向かったドラゴンがぐるりと宙返りしたのが見えた時、一つ……いや、2つ影が増えた。
それは近づくにつれて巨大な鳥だと分かる。
ひとつは真っ黒な烏……そしてもうひとつは極彩色の鷲。
「ファンの新成人の皆っ!おめでとうっ!」
上空から異常に大きい声で祝いの言葉がかけられ、新成人達は度肝を抜かれる。
その頭上でレッドドラゴンが空に向かって大きく炎を吐いた。
ゴオオオォォッ
同時に鷲の口ばしがカパッと開いて、目に見えない何かが放たれる。
キイイィィィン
その2つが衝突した瞬間、赤い炎が小さな花に変わっていった。
ポン ポポポポポポ
妙に可愛らしい音を立てて変化していく赤く小さな花達を、烏が大きく羽ばたいて舞い上げた。
「わあぁ!」
「綺麗」
「スゲースゲーっ!」
舞い上がった花は新成人達に降り注ぎ、祝福のシャワーを浴びせる。
「南の大陸から、未来ある若者達に祝福を!!」
極彩色の鷲から聞こえる大きな声に応え、新成人達はわあっと歓声をあげた。
「派手だなぁ」
その光景を見ながらランスロットは苦笑し、横にいるジェノビアはキラキラと目を輝かす。
視線は鷲の上に居る人物。
大好きな水色の瞳の持ち主だった。