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私の王子様
【ファンタジー 官能小説】

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大好きな瞳-3


 成人式の日は式が始まるまで懐かしい友人と話をしたりするのが通例だが、王子様とお姫様となれば一般人の若者のようにはいかないもの。
 各国の王族や貴族達から贈られる祝いの言葉やら、記念の品々をひとつひとつ丁寧にいただき、ひとつひとつ感謝の言葉を返さねばならないのだ。
 特にこの2人の場合、来城者の数が凄い。
 ランスロットは次期国王なので彼を射止めようとする王族貴族の数が半端ない。
 ジェノビアの方も美しく可愛らしく、更に魔法使いでもあり、ファンと繋がりまで持てるとなると殿方達が放っておかないのだ。

「か、顔が戻らない……」

 何時間も笑顔で居続けたランスロットは、うにうにと顔をマッサージする。

「お尻痛ぁ〜い」

 椅子に座りっぱなしだったジェノビアもお尻を擦っていた。
 成人式まで後30分というところで、やっと解放された2人はそれぞれに自分を労る。
 ジェノビアはお尻を擦りつつ時計に視線を向けた。

(来られてないのかしら?)

 ジェノビアが気にしているのは特別に招待したお客様。
 真っ先に来て一番最初にお祝いしてくれるかも、と期待していたのだがその人はまだ来ても居ないようだ。

(やっぱり、ご迷惑だったかしら)

 忙しい人なのは分かっているが、優しい人でもある。
 成人式だしもしかしたら、と思ったりしたがやはり無理だったようだ。
 きっと後日、お詫びの手紙と共にお祝いの品が届くのだろう。

(ん。我が儘はダメ。我慢我慢)

 ジェノビアは沈む気分を無理矢理浮上させて成人式に挑む事にした。

 お城の大広間での成人式が無事に終わると、庭園でのガーデンパーティーが始まる。
 パーティーにはロイヤルファミリーも参加する事になっており、新成人達はかなり緊張していたのだが、気さくに話かけてくる国王達に徐々に緊張も解けていった。
 そんな穏やかな雰囲気の中、ジェノビアはグラスを持ったまま空を仰ぐ。

(……ぁ……)

 優しい風が運んできた魔力の波動。
 ほんの僅かなそれに気付いたのは、ファン魔法学園の学長魔導師とジェノビアだけだった。
 学長魔導師がすっと手を上げると、彼の頭の上に乗っていた赤い火竜が飛びたつ。
 何事かと火竜を目で追う人々が見守る中、火竜はぐぐんと巨大化した。



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