大好きな絵本-5
「ヒヒヒ、分かってるよ、王子様」
魔法使いは今度はちょいちょいと手を振って、王子様を招きます。
「泉を綺麗にしたいんだろう?ヒヒヒ、分かってる分かってる」
魔法使いは引き出しから何かを出すと、王子様の手の平に乗せました。
それは白い軽石のような物です。
「これは何?」
「それは『浄化石』じゃ。毒を吸い取ってくれる貴重〜な石じゃ」
魔法使いの話を聞いて王子様の顔が輝きました。
これがあれば泉が綺麗に戻ります。
「ありがとう。お婆さん」
王子様がお礼を言うと、魔法使いは首を大きく横に振ります。
「それじゃあ足りん。その大きさなら百個は必要じゃ」
「ひゃ、ひゃく?!」
「そうじゃ。それは銀の月のかけらと言われておる。銀の月の光を浴びると仄かに光るからじゃ。銀の月が綺麗な夜、探すと良いじゃろう」
魔法使いはそう伝えると、あとは黙って魔法書に夢中になってしまいました。
「ボク、頑張る。ありがとう、お婆さん」
王子様はもう一度お礼を言うと、地下室から出て行きました。
その日から王子様は毎晩外に出て浄化石を探しました。
お城の広大な敷地内を毎晩毎晩、仄かに光る浄化石を探して歩き回ります。
浄化石はそこらへんに簡単に転がっている物じゃありませんでした。
イバラの群生の中や、大きな蜂の巣がある木の根本、蠍がうじゃうじゃ居る洞穴。
王子様は傷だらけになりながらも浄化石を集めました。
何年もかかって集められた浄化石は、百個以上ありそうです。
王子様はその浄化石を泉に持って行きました。
「時間がかかったけど、これで泉が綺麗になるよ」
泉の濁った水面は静まったままです。
王子様は構わずに浄化石を泉に入れていきました。
ちゃんと泉全体が浄化するように、まんべんなく入れていきます。
全部入れ終ると、王子様は水辺にかじりついて泉を覗きました。
銀の月が水面に映ってユラユラ揺れています。
すると、泉に入れた浄化石が光り出しました。
泉のあちこちで明滅する浄化石の光がだんだんと強くなっていきます。
「わあ……」
あまりにも幻想的な光景に、王子様は目を輝かせました。