意外な強敵-2
「……そうだね。じゃあ歩仁内くんとお兄さんには迷惑かけちゃうけど、ここはお願いしようか」
石澤さんが修と顔を見合わせていると、
「あー、全然迷惑じゃないから、そんな気を遣わないでってば。
大学生の夏休みって無駄に長いし、参加させてもらってむしろ感謝してるんだ。
よろしくね、ええと、何ちゃん……?」
と、州作さんは石澤さんにニッコリ笑いかけた。
その爽やかスマイルに、ポッと顔を赤くする彼女。
あー、そんな露骨に赤面しちゃったら、修に怒られちゃうぞ。
そう思うや否や、すかさず彼女の手を取った修は、そのまま自分の身体の陰に隠すように手を引いた。
そして修はニッと不敵な笑みを浮かべたかと思うと、その薄い唇をゆっくり開き、
「んじゃ、歩仁内の兄ちゃんとは初対面だから自己紹介するわ。
オレは歩仁内と同じクラスの土橋修って言います。んで、こっちがオレの彼女の石澤桃子です。
ちなみに、今年の夏の目標は、そろそろ大人の関係になりたいことです」
なんて、冗談に聞こえない冗談を言いながら、州作さんに反対側の手で握手を求めていた。
修の自己紹介に、皆がドッと笑った。
そんな中、顔を真っ赤にして怒るのは、やはり彼女。
「ちょっと! 何言ってんの!」
「何だよ、目標くらい好きに言わせろよ」
「ってか、自己紹介にそういうのはいらないでしょ! バカ!」
石澤さんが怒っていても、口笛を吹く真似をして、すっとぼける修。
そしてまた二人は、いつものパターンでじゃれ始めた。
そんな二人のやり取りに、すっかり空気が和んだような気がしたけど。
屈託なく目尻を下げて笑う修をチラリと横目で追う。
……修、あれ、わざとだよな?
州作さんの爽やかな笑顔に、あまり男に免疫のない石澤さんは顔を赤くした。
それに気付いた修はわざと牽制するため、ああやって付き合っているのを明言したんだろう。
もしかしたら、修もまた密かに胸騒ぎを感じていたのかもしれない。