僕だって！-1
「さてっ！忘れ物は無いね！？」
入院時に置かれたバックや見舞い用の花が片付けられ、ガランとした見慣れた病室。
僕はキツイリハビリを終え、今は立っても歩いても不自由も痛みも感じず。
電話で退院の一報を杏に入れ、案の定喜んで迎えに来てくれた。
「本当に大丈夫？まだ痛む所とか無い？」
あの外国人看護士からリハビリ卒業を告げられた後、日常生活に問題は無いが無理は
禁物と、外国なまりの声で釘を刺され。
「普通に動ける事に若干戸惑いはあるけど大丈夫。」
「そう、なら先行ってるね。」
流石に未成年が家族以外の親しい人と、医者に挨拶して退院する訳にもいかず、この後
迎えに来る母と共に病院を後にする予定で。
こうして僕が退院し、再び学校に行けたのも彼女のお陰。このまま二十歳までしか生きられない心臓病で、体の怪我と共にこの病院で残りの余生を過ごすんだと絶望していた。
彼女が自分の身を削ってやりたくも無いバイトをしてリハビリ代を稼いでくれ、心臓病の事でくじけ、人生全てを諦めていた僕に、変わらない明るい顔元気な声で勇気付けてくれた杏。
本人は「貴方が大好きなんだから当然よっ！」と答えるものの、僕は彼女への感謝と愛おしい想いで一杯だ。
陽気に鼻歌を奏で、広げた私物をしまいベットを放れようとする彼女。
僕はそんな彼女の腕を掴んだ…。
「んっ！？」
当然の如く驚いて振り向き。その後何を口にする前に、そのまま僕の想い想いを全て包み込むように、彼女を引き寄せベットに座ったまま抱き締めた。
「ちょ、ちょっと絆っ！？放して、私そろそろ帰らないと…」
「ダーメ♪もうこのまま放さない！！」
「……」
口を開け困る杏、しかし抵抗もせず甘えた声で言葉にする。
胸の鼓動が高まり出した僕は、そのまま完治した体で、彼女をベットに仰向けにさせ
両腕を押さえ、顔を近づけ欲しいがままに唇を奪った。