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好き…だぁーい好きなんだからっ!
【幼馴染 恋愛小説】

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僕だって!-6

「そんなの、ストーカーにつけ回されているに決まってるじゃない。」
「ストーカー?」

普段と変わりなく、部室で筆を動かしつつ、伊藤サンがやや強い口調で語る。
 
ストーカー。確かにそれなら全ての事に説明が付く、あぁ何でこんな単純な事に早く
 気づけなかったんだろう!

「人付き合いが悪いのも他人を巻き込みたくないから、そのカラスの死骸だって驚いて
 咄嗟の判断だろうけど、家族を巻き込みたくなくて、隠そうとしたのね。」
「カラスはたまたま親が発見しなかったとはいえ、無言電話を夜中にすればストーカー
 と感じ、警察に相談するんじゃ」
「きっとしたと思うわ、でも大事にしたくないんじゃない?と言うより織原サンがそれを
拒んだんじゃない、きっとそうよ」
「……」

杏は明るくて友達や家族を大事に想ってくれる、だから彼女の行動は解らなくとも無い
 でもっ!!

「先輩?」

僕は原因が解った所で、椅子から立ち、片づけをし鞄を手に取る。

「ゴメン二人とも、今日はちょっとこれで」
「今日も…でしょ?一体どうしたんです?」
「馬鹿ね、彼女の所に決まってるでしょ!…全く気持ちは解るけど部長がこう頻繁に
 部活を抜け出して、次のコンクールだって迫っているのよ…」

不満気な表情を浮かべる伊藤サン、しっかりしてるよね無論良い意味で、部長は伊藤サン
の方が適任か…。
 確かに伊藤サンの言うように、絵は大事だ、部活だって入院したりしてコンクールにも
顔を出してないし、こんなんじゃ後輩に申し訳無いし、部長としての顔も立たない、極めて褒められた行動じゃないだろう、ケド!

「ゴメン、勿論絵は大事だよ、でもそれ以上に杏はもっと大事な存在だからっ」

鞄を持ち、扉を半開きにし、そう捨て台詞を吐く。

「先輩、かっちょいいー♪」
「バカ……。」


美術館を背に、僕と杏は公園を目指し歩いて居た。

「楽しかったね美術館」
「全く驚いたよ、家で再放送のドラマを観てたのに、急に電話で誘って」

部活を後にした僕は彼女を探しテニスコートへ行ったが杏の姿は無く、部活の日なのに、
休んでるなんて、きっと家で引き篭ってるに違い無いと、美術館へ向かいつつ彼女を誘い
躊躇いはあったもののオーケーの返事を貰い、表面上は何時もの明るい彼女では
 あるものの、時より暗い横顔を見せ。
 正直誘いを断られるとも考えた、あんな目に遭ったのだから家に居ても可笑しくないとでもきっと彼女は来る、そう信じて。

犬の散歩をする女性、ジョギングをする男性を目にし、僕らはゆっくりとした足取りで
 公園内を歩く。

「風が気持ちいいね」
「そう、だね…」

ぎこちない返事、僕は本題に入る事に。

「やっぱりまだ元気が無いね、どうしたの?」
「だから別に、何でも。」

「あれから嫌がらせはされてない?」
「えっ?」

僕はカマを掛けた後、ストーカーに遭っている事実を打ち明ける。
 予想もしない僕の言葉に目をキョトンとさせる。

「嫌がらせって何が…」
「付け回されてるんでしょ?たちの悪いストーカーに」

何で知ってるの?と言う顔で更に目を開く。

「昨日君の家に行ったその時オバサンから聞いた、夜中に無言電話が掛かって来たとか、
不気味なカラスの死骸だって…」
「!!…」

図星だな、そうであって欲しくは無いのが本心だった、ストーカー何て、ずっと前僕の為
にレイプされて必死に逃げてきたばかりだと言うのに。

「わ、私は…別に」
「もう無理しないで!もう、解ってるんだから」
「でも…」
「他人を巻き込みたくないと言うのは解る、でもこっちは心配なんだよ」
「……」
「怖かっただろう、でももう大丈夫だ、僕がついてる。」
「絆……、う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

溜まっていた物を一気に吐き出し、思いっきり僕を抱き締める彼女。
 これで良い、これで……。

  
 



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