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ボールと家族とワールドカップ
【家族 その他小説】

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中年男の足掻き-3

「おじさん、ボールに慣れるまでは、ノーバンで受けなくて、ワンバウンドさせてから蹴ったらいいみたいですよ」

少女の助言の通り、蹴り上げたボールをそのまま受けずワンバンドさせて、再び落ちるボールを下から軽く蹴りあげた。

「そうそう、蹴る時に真上に上がる事を意識してね」

なるほど、これはいい。ワンバウンドしてから受けるから、その分余裕ができる。だから慌てて足を出さない分失敗も少ない。私はこの練習が気に入って、そのまま続けることにした。

休憩を挟みながら、小一時間ほど経つと少女は練習を止めた。少女の帰る時間になったのだ。

「おじさん、今日はありがとうございました。お陰様で安心して練習ができました」

「いやいや、こちらこそ。え〜っと…」

「知美です」

ハキハキと答える少女に好感を覚えた。

「知美ちゃん、こちらこそ教えてくれてありがとう」

「明日も練習に来ますよね」

一瞬、どうしようかと迷ったが、真っ直ぐな目で言われると頷くしか無かった。

「もちろん」

「よかった。じゃあね、おじさんまた明日。お風呂に入ったらしっかり揉まないと明日起きあがれないよ」

知美はそう言いながら自転車に跨って帰っていった。

知美の後姿を見送りながら、麻衣の事を考えた。

麻衣ともこんな感じで話せたたらいいのに。

私は少し高揚している気分をぶつけるために、地面のボールを力任せに蹴ってみた。

運動不足で無理をしてはいけなかった。私の足はボールを捕らえる事無く、そのまま空振りをして、その勢いのまま思いっきりひっくり返ってしまった。




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