中年男の足掻き-2
見られてた…
「え、ええ、チョット運動でもしようと思って」
恥ずかしい思いを押し込めて、少女の問いに答えた。
よく見れば麻衣と同じ歳くらいの少女で、自分と同じようにサッカーボールを手にしていた。
「あなたもですか?」
「はい、いつもここで練習するんです。でも今日は先客が居て吃驚しました」
「それは失礼しました。私はこれで止めますからどうぞ」
場を開けて去ろうとした私を、少女は慌てて止めた。
「えっ、あたしのためにそれは駄目ですよ。まだ、少ししか練習してないじゃないですか」
「えっ?最初から見てたの?」
私は驚くと共に恥ずかしくなった。
「ごめんなさい。ついつい見てしましました」
少女は申し訳なさそうにしたが、直ぐにニッコリと微笑んだ。
「お仕事の後なのに、練習するなんて凄いですね」
「そんな事ない。ただの戯れですよ」
ますます恥ずかしくなった。
「練習、一緒にやりませんか?」
「えっ、一緒に?どうして?」
驚いた私に少女は誘った訳を話した。
上手くなりたいので、この時間に1人で練習をしている事。公園で女が1人練習している危険を思い、時々心細くなる事。
「でも、私だって男だぞ。危険人物だったらどうする」
麻衣の事が脳裏を過り、少し感情的になった。もし麻衣が見ず知らずの中年男と一緒に居たら、心穏やかではいられない。
「ははは、おじさんは大丈夫ですよ。見ていてわかります。それにいざとなったら走って逃げますから」
屈託なく笑う少女に、ついつい私も釣られて笑ってしまった。しかし、その顔が引きつっていたのを自覚していた。
それと、もし私が上手い人だったら、声を掛けなかった事を少女は付け加えた。
「だって、下手なところ見られたら、恥ずかしいじゃないですか」
端的に言えば同じくらいの下手で、人に危害を加えそうにないから声を掛けたという事だ。
明るい少女を見ている内に、さっきまでの鬱々とした気分は雲散していた。それに万一、このまま私が帰って、その後に少女に何か有ったら大変だ。そう思った私は、少女と並んで練習を再開した。
少女は私よりも遥かに上手かった。それでも完全にボールをコントロールしている訳ではなく、なんとか浮いたボールに追いついている様な状態だった。
少女は少しでもボールをコントロールしようと、練習に励んだ。
私もなんとか少女の技量に近づこうと思ったが、中々直ぐに上達するはずはなかった。そんな私を見て少女が助言をくれた。