〈狂宴・前編〉-8
『お…お姉さん達にぃ余計なコトを言わせないようにしてねぇ。ウプッ…私、今から優愛ちゃんを“教育”するんだからぁ』
「ち、ちくしょうッ!!ふざけん……がぎぎぎッ!!!」
「二人を許してあげてぇ!!……私だけで良い……はぷぶぶぅッ!!」
景子には黒革の巻かれた棒状のギャグ……バイトギャグが咬まされ、春奈には赤いボールギャグが咬まされた……喧しい姉の口撃は遂に潰え、人間の言葉を話せるのは優愛と奈和だけとなった。
『美穂さんの事で心に傷を負って……ヒヒヒ……優愛ちゃん可哀想ッ!』
「な、何も知らないクセに…ッ……さ、触っ…触んないでよぉ!!」
タムルは背もたれの後ろから覗き込み、早くも汗ばんで湿る肌に付着した髪を優しく掻き上げた。
優愛の瞳はいよいよ恐怖に凍り、サロトに捕らえられた奈和と、天井に向かって伸びる足の間に見える姉に、縋るような視線を送った。
『……もしかしてぇ「レイプされるくらいなら死んでやる」なんて思った?ウフフフ……』
「ッ!!!」
一瞬の目配せに込められた願いを、タムルは見抜いていた……この一言に優愛は戦慄し、得も言われぬ嫌悪感に襲われて背筋が凍った……。
『そんなコトになったらお姉さんが悲しむわぁ?だからぁ……死なせてあげないッ!』
「ちょっ…!?何す……はがあぁぁ!?」
優愛の口には冷たい金属のリングが嵌め込まれ、その顔の下半分は黒革のベルトに覆われた……あの日、架純の“命を守った”ホールギャグである。
『景子お姉さぁん、これで貴女の妹さんは死ねないわぁ。安心していいわよぉ?ウフッ…ウフフフ……』
「ッ〜〜!!!」
手足には枷が付けられ、口にも轡が付けられてしまった……これならば如何なる自傷行為も不可能であり、自ら命を絶つ事も出来ない……。