〈狂宴・前編〉-5
『クックック……お前もあのオヤジに姦られて分かるだろぉ?とんでもねえ変態に妹が弄ばれるなんて……しかも目の前でだぜ?』
「やめろッそんな事やめろぉ!!」
「〜〜ッ!!!」
二人の刑事を他所に、優愛には奈和を引き連れたサロトも近付き、着々と凌辱への準備が進んでいた。
景子は助けたい一心で駆け寄ろうとするが、拘束され続けている身体は一歩たりとも近付けない。
吊られた顔は引き攣った泣き顔となり、その追い詰められた視線は改めて春奈に突き刺さった。
「春奈ぁッ!!貴女の悩みなんかを聞いた私が馬鹿だったわ!!」
「ッ!!!」
妹の絶体絶命の危機に直面し、しかも救出すら叶わない現実を突き付けられた姉は、怒りの矛先を春奈へと向けた……あの日、関わりさえ持たなかったなら、自分達は平穏なままでいられた……刑事として失踪事件の事を聞かされたなら、それを無視する訳にはいかない……その事を知っていながら春奈は教えた……。
「参考人でコイツを捕まえろって、私言ったわよね!貴女が下らない意地張った挙げ句に、このザマじゃないの!!」
「ッ……!!!」
巻き込まれた悔しさと怒りは制圧失敗の時から抱いてはいたが、いよいよ事態は最悪となって口を吐いてしまったのだ。
あの時、確かに景子の言う通りにしていれば、専務も八代も命運は尽きていたはず……あの瞬間に歯車は狂い、身の程知らずな者達の運命は決められてしまった……。
「……私…私が全部悪いの…ヒック……許して…許して下さい……ヒック…ヒック……」
滂沱の涙を流して春奈は詫びた……償いきれないと知りつつも、春奈には謝るしか無いのだ……船の中でも味方でいてくれた景子の辛辣な台詞は、三匹の鬼畜達の責めよりも深く、春奈の心を傷付けた……。
『フヒヒ…お二人さん仲が良いのねえ。優愛ちゃんが怖くて……ウプッ…泣いてるのにさあ?』
目が据わったままのタムルは景子に近付くと、上半身に絡む麻縄を掴むや背後に回って抱きついた。
そして耳元に唇を近付け、酒臭い息を吹き掛けた。
『……プフゥ〜……今から貴女の前でぇ、大事な妹さんを“牝豚”にしてあげるぅ……ウヒ…ヒヒヒ……』
「!!!!」
一睡もさせなかった非情な宣告が、改めて景子の鼓膜に突き刺さる……手足を縛って抵抗出来なくして、欲情のままに弄ぼうというのだ……。
『男嫌いな牝なんてぇ、私は許さないのぉ……ゲフッ……骨の髄までチ〇ポ狂いの牝豚に躾て…あ・げ・るぅ』
「ま、待てよッ!!ちくしょうッ!!優愛に近付くなあ!!!」
タムルがフラフラとベッドに拘束された〈美肉〉に近付くと、姉妹の瞳は動揺に軋み、恐怖に固まった……景子はタムルの歩みを止めようと藻掻いて、首輪から逃げようとする犬のように頭を振り、優愛は必死に頭を擡げ、不自由な手足をバタ突かせて逃げ出そうと足掻く……恋人の奈和も、一連の事件の“元凶”の春奈も、ただ見ているしか出来ない……。