〈狂宴・前編〉-11
『何してんだテメェ?早く四つん這いになれよぉ……』
「げはッ!!げえッ!!げほぉ!!」
優愛達の前で行われているのは、粗暴な“二匹”による虐めであった。
タムルが優愛にしようとする、女体を拘束して楽しむものではなく、暴力で支配して言う事を聞かせようという極めて単純なものだ。
『犬になるくらいなら死んじまうってかあ?舌ぁ噛んで死ぬって言ってもよぉ、失血して死ぬまで何時間ものた打ち回るんだぜ……口から千切れた舌をブラブラさせてなぁ……それでもいいなら早く噛み切れ!』
専務は奈和を跨いで見下ろし、髪を掴んで頭に平手を打ち込んで叫んだ。
本来の専務の嗜好なら、タムルのようにネチネチと虐めるのが趣味なのだが、奈和の夏帆を彷彿とさせる容姿がそうさせなかった。
可愛さの中に宿る影、それに虫酸が走るのだ。
「ら、乱暴しないで!!痛いッ!!い、痛いッ!!」
奈和は悲鳴をあげながら、サロトの足元に四つん這いとなって蹲った……この喉元が見えない位置にいながら首輪を外し、もう一度逃げようと思わなくもなかったが、次こそは本当に殺されてしまうかも知れないという恐怖が沸き上がる……いきなり首を絞められ頭を叩かれた事で、奈和は呆気なく従順になってしまった……。
『……やはりコイツにワシらの言葉は解らんか…?』
『見ての通りの馬鹿ですからね。まあ、御主人様との間に〈愛〉が芽生えれば、言葉なんて関係無いですよ』
二人の足元で、奈和は泣きじゃくって肩を震わせていた。
生来の強気な性格など、ここでは発揮されるわけがなく、土下座のように小さくなって、意味不明な言語と笑い声を背中から浴びせられる。
このまま時が過ぎ、誰かが助けに来てくれるのなら今のままでも良いのだが、残念ながらその可能性は全く無い。
『チンチンだ……ほら、犬の“チンチン”だよ!早く御主人様に見せろ!!』
「!!!」
奈和は犬でいるしか無い……蛇のような顔をした男と、ガマガエルのような男のペットでいるしか無いのだ……泣き顔を両手で覆い、立ち膝で背筋を伸ばす……と、やはり専務の罵声が飛び、奈和の頭はピシャリと叩かれた……。
『馬鹿野郎!立ち膝になる犬がいるかよぉ?がに股でしゃがんでスカート捲って、パンティーを御主人様に見せろ!!』
トラウマで男性不信になった優愛とは違い、奈和は生まれながらのレズビアンである。
男性に対する恐怖や嫌悪感は優愛の比ではなく、性的な目で見られるだけでも全身に悪寒が走る。
そんな奈和に、専務はスカートを捲れと要求した。
自ら進んで破廉恥な姿を晒し、慰み者になれと言うのだ。
(無理よ……もう…無理……)
さっきサロトにスカートを捲られ、褌のようにパンティーを尻に食い込まされただけで、奈和の“乙女心”は崩壊寸前だった……もうこれ以上の恥辱は、奈和には出来ない相談なのだ……。