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好き…だぁーい好きなんだからっ!
【幼馴染 恋愛小説】

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親対子-1

市販の何処にでもある茶封筒を、白いベットに座る僕に、改めて両手で渡す彼女。
 頭上に?マークを浮かべ、その封筒の中身を取り出し、中の物を目にした僕は目を丸くした。

「お金…これって。」

封筒から半分覗かれた十枚ほどの一万円札、「どういう事?」とでも言わんばかりに、椅子に座る彼女へ視線を向け。

「これはねっ!……」

説明に入ろうとしたが、途中で打ち明けるのが怖くなったのか、思わず話を止め出し。大体の察しがつく僕は、代わりに口にする。

「ひょっとして、僕へのリハビリ代?」
「あ…」

目をパッと見開く、どうやら正解のようだ。でも僕は素直に喜べない、何故なら。

「僕、言ったよね?無理はしないでって、自分を大切にしてくれって…」
「……」

苦い表情で、僕から目線を逸らし。

「…解ってる、こんなもん貰ったって、貴方はちっとも嬉しくないって事。」
「杏…」
「私が貴方の為に身を削るのを自重するのは間違ってない。でも!大好きな貴方を救う為に、行動に移すのも決して間違っていない筈!」

突然声のボリュームを上げる、その瞳は以前僕を救う為、周りの制止も耳に貸さず、ただただアニメで催眠術にかけられ悪人の味方をする目を黒く染めた彼女ではなく、決意にも
似た真っ直ぐな物だった。

そして彼女はこのお金を手にするまでの経緯を、ゆっくりとした口調で語り始めた。


一ヶ月前、自らの身を僕なんかの為に滅ぼそうとし、それを全力で止めたその翌日。
 杏のお母さんの知人であると言う、喫茶店を経営している優梨子サンって方が、以前リハビリ代を稼ぐ手段としてバイトを申し出てきた杏へ「人が一杯なの」と断ったものの
 後で丁度一人バイトのが辞め、新しい人を募集しようと考えていた所を、杏の訴えを
思い出し、募集をやめスペースを開けといてくれたらしく。

その事で家から電話が来て、誘いを受けたらしく。
 最初はその吉報に笑みを浮かべていたものの、僕のお願いを思い出し、取り合えずオーケーの返事は待ってもらい。後日御園サンに相談し「彼の為に、バイトに行かないほうが
良いのかな?」と申した所を落ち着いた声で「無理をする事と、何もしない事は別だよ」
 と語り。その言葉で迷いが消えた杏は再びオーケーの電話を掛ける為、受話器を手に。

彼女の働きっぷりはとても素晴しい物で、無遅刻無欠勤は勿論、何時でも太陽のように
 明るく元気な客への笑顔の対応、休まる事を知らない誠意溢れる脚の動き、嫌な客に対しても嫌な顔一つせず大人的にあしらい、店主の優梨子サンを初めとした従業員達はとても助かったと口を揃え絶賛し。

そして昨日、優梨子サンからの厚い感謝と共に給料明細書を渡され、目的を果たしバイト
を辞め、大胆にもその全てを下ろし、今に至り。

「あれからしばらくリハビリは出来なかったでしょうケドこれでまた復帰出来るね、今度はちゃんと専門の看護師の方と共に」
「……」

彼女はバイトをしたのか、幾らこの前見たいに恐ろしい手段で強引に金を稼いだ訳じゃないとは言え…。
 僕の為にやりたくも無い事を。

「バイトはー、うん!結構楽しかったよ!お客が満足気に帰って行って、ホラ、お客様の
笑顔の為にって奴、客があまり来ない時間帯アイドルタイムだったかな、その時なんて
 もう他の従業員とお喋りしまくったりして、中々良い社会経験にもなったし!」

僕との約束をしっかり覚えている彼女は、心配掛けまいと色々語り。

曇った表情の僕、その顔を目にした彼女は解ってもらえてないと感じ、じょじょにその
 作り笑いが薄れ。

「絆、私は…」
「……」

僕の為に、意を決して慣れないバイトに身を乗り出し、嫌な客へも殴ってやりたい気持ちをグッと抑え、汗水垂らしただひたすら……

そんな彼女の姿を鮮明に頭に浮かべ

「御免なさいっ!でもっ、でも本当に楽しかったんだよ!だから、だからぁ心配しないで
私なら…、!!?」

そんな彼女をより一層愛おしく、感情が一気に上昇し、僕はその溢れんばかりの想いを
 胸に、彼女を強く包み込んだ…

「有難う!ほんっとうにっ!…、こんな、こんな僕何か為に…。」
「きず、な…」
「大好きダヨッ!!僕、僕っ、君に出会えて本当に、良かった。」
「っ……」

想いを出し切り彼女を解放し、目を潤わせ。

「必ず、完治させて見せる!そして再び青い空を目に出来たその時は、一緒に旅行に行こう!思いっきり楽しんでっ!」

彼女はパァと笑みを浮かべる、今度はフェイクも迷いも無い


暗めの病室で、僕等の周りにダケ光が差したように互いに喜び合う。

「……。」

そんな光景を、ドアを半開きにし無表情のまま覗く男性の姿が…
 見覚えのある、彼女の父親の姿。

この時の僕は知らなかった

のちに彼女を巡って「あんな事」になる何て未来を…。



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