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好き…だぁーい好きなんだからっ!
【幼馴染 恋愛小説】

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親対子-5

「体の方は、大丈夫?」
「うん、今日も軽く運動したし、ただ心の方は、ちょっと…」
「絆…」

私は今、見慣れた自宅に立っている、彼を連れ。先生から外出許可は貰った。
 普段と変わりない一軒家、でもその建物が今回ばかりは雲を越える高い塔に見える。
 奇しくもこれからの出来事を警告するかの如く空はねずみ色に濁っている。

「しっかりして!絆が今からそんなんだと、私まで不安になるよ」

おどおどとした彼、仕方が無い、彼は基本的に怖がりで、増して自分を根っこから嫌ってる私の父が目の前の家で待ち構えているのだから

「でも、どうして僕まで?態々先生に外出許可までとって一緒にリハビリ代を請求する
 必要はあるのかな?」
「ただお金を請求するダケじゃない」
「え?」
「これは良い機会よ、白黒決着をつけようじゃない!」

そうだ、貰うのはお金だけじゃない。
 私は意を決し、見慣れた重いドアノフにゆっくりと手を掛けた。

「ただいまー!」


見飽きた居間が容赦なく重い空気に圧し掛かる、父も母も絆も、そして私も、誰も言葉を
発しない、ただただ虚しく壁掛けの時計だけが時を刻む音を奏でる。

「はい杏、どうぞ…」

普段と変わりない口調でテーブルに熱いお茶を置く母、だが父には無言で置き、絆には
 低いトーンで「どうぞ」と置き、絆は軽く頭を下げる。

「一体何しに来た?」

お茶を一口した父が、重く冷たい口調で彼に言葉を掛ける。

「あ、あのー実は今僕リハビリをしている身なんです、でもリハビリ代があと三万ほど足りなくて、それで!」

父の問いに必死に返答する絆、しかし

「何がリハビリ代だっ!娘をあんな目に遭わせて置いてまだ自分の身の事しか頭にないのかっ!?」
「!!」

机を乱暴に叩き、静寂な空気を切り裂くような怒号を放つ父。

「お、お父さん」
「こっちが一体どういう思いで!」
「落ち着きなよ…」

見かねた母が父を制止し、お盆を台所へ置き、彼女も席につく。

「杏、まさか貴女、彼の為に彼のリハビリ代を稼ぐ為に」
「……」

無言の返事、別に隠すつもりはなかったのだが

「立派ねぇ、大好きな人を助ける為に、やっぱ貴女は私似ね」

穏やかな表情、母は最初っから解っていたのだろうか

「おいっ!何笑ってるんだよ、娘はコイツのせいでただ働きされたんだぞっ!」
「ただ働きって、私は自分の意思で!」
「お前は黙ってろ!」
「っ!…」

「何処までも図々しい奴、俺は一銭も出さんぞ!何で娘を苦しめる疫病神何かに金を渡さなければならない?馬鹿も休み休み言えっ!」
「……お母さん」

父じゃやはりアテにならない、私は理解者である母に視線を向け助け舟を渡す。

「貴女の気持ちは良く解るよ、大好きな彼の為に頑張ったんだもんね」
「お、おいっ!」

顔がパァとなる、やっぱり母だ、信用出来る。しかし今回は

「でもね!親の身にもなって、貴女が彼の為にレイプを受け怖い思いをしたって聞いたときは、心底心配した!おめおめ入院してる自分を恨んだ、解る?」
「!?」
「親は何時だって我が子を優先するもの、だから」
「娘の気持ちを尊重してくれないのっ!?」

これはただただリハビリ代を請求するだけじゃない、ここでお金を二人から受け取れる事
はすなわち彼を助ける事、彼と私の仲を認めるもの、そう思っているのに、父は兎も角
 母までもここまで…、置き換えたらそう口にするだろうな

「悪いけど、リハビリ代は出さない、彼との交際も認めない」
「そんなぁっ!彼を見捨てろって言うの?あれだけお世話になって、小さい頃から色々
 優しくして貰って、よく歓迎してくれたじゃない!それをちょっと私が危険な目に遭ったからって酷いよ!もうあんな危険な真似は二度としない!確かに彼が苦しんでると私も
心労は耐えない、でも、それでも私は彼が好き、大好きなのっ!」
「しかしどんなに好きでもこいつの命はあと僅か、好きな重いが強い分」
「解ってるよっ!そんな事!だからってこのまま死ぬのを待てって言うの?!そんなの人として可笑しいよっ!」
「お前なぁ」

「絆からも何とか言って!」

先ほどカラ話の渦中にいる絆は気まずそうな顔で机にばかり視線を置いているので、少し
背中を押してやり。

「杏サンを苦しめ、苦労を掛け、それを知って止めなかった行為は謝ります。でも!
もう彼女を悲しませたりはしません!一日も早く退院して彼女を笑顔を護り、幸せにしますっ!ですからぁ」
「なぁにがっ護るだっ!何が幸せにする、だぁ!口ばっかだろ、今のお前に何が出来る?
昔から頼り無くて娘に苦労をかけて、現に今だってこれだけ。仮に退院した所で何だ!?
それで持病が治る訳でもない、どっちにしたってお前は大人になる頃には死ぬ、二人が
 どれだけお互いを思ってるのは解ったが、やっぱりその為にもお互い」
「構いませんっ!このまま病気なんかの為に自分に嘘をついて、大好きな人と放れるくらいならそれでっ!」
「!!」

お互い一歩も引かず平行線のまま、だが私達は負けない、真っ直ぐな嘘偽りの無い瞳で
 親を見つめる。

「…解った」

観念したのか、母が何かに同意する。

「華」
「リハビリ代は出しましょう、杏の言うように彼には色々と世話になったわ、娘に色んな
事を教えて、笑顔にさせてくれた」
「!」
「でも、私達だって人間よ、愛娘が危険な目にさらされて、幾ら彼に落ち度は無く、自分の意思でやったにせよ、私は今の杏を信用出来ないし、彼を許す気にはならない」
「……」
「どーせアンタの事だから、ここでリハビリ代を出す事を拒めば後が無いと今度は、他に救う方法が無いと言い聞かせ、空き巣に万引きをしかねない」


 


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