あたしの気持ち-2
一通りバック在庫を数え、仮の用紙に記入し終わると、あたし意外の人は帰り支度をはじめた。
「あれ?皆さん帰るんですか?」
「そうだよ。あとは高野さんの仕事。木谷さんは、その補佐。頑張って覚えてね♪」
「えぇ?そうだったんですかぁ?…ってかマネージャーは?」
「あの人は明日、出来上がったのをチェックするだけ(笑)」
「ズルイ(笑)」
「まぁまぁ(笑)そんなモンよ。じゃあ帰るわね。お疲れさまぁ〜」
「お疲れさまでした!」
(ふぅー…みんな帰っちゃった)
あたしは、さっき記入し終わった用紙を持って事務所へ向かった。
――‥コンッコンッ!
「失礼します」
中に入ると高野さんはタバコを吸いながらパソコンの前にいた。
「高野さぁん、終わりましたよぉ」
「あぁ、じゃ、それをコレと見合わせながら入力してって」
そう言うと事務所から出ていってしまった。
「はぁ…まぁ、やるか」
しばらく黙々と入力作業をしていたあたしのポケットからケータイの着信音が聞こえてきた。取ろうかどうしようかと悩んだが
(あたししかいないし、いっか♪)
「はい、もしもし」
『あ、京ぉ?俺だけど…まだ仕事、終わんないの?』幼なじみの拓朗からの電話だった。
「あー、ゴメン!実は棚卸しで、まだ帰れそうにないんだ。メール入れとけば良かったね。ホントにゴメンね」
『あ、そうだったの?わかった。んじゃ、頑張れよ!もし終電なくなるようなら迎えにいこうか?』
「ううん、平気だよ。そんなに遅くならないでしょ♪うん、わかった。ありがと。じゃ、またね〜」
ピッとケータイを切ると同時に後ろから
「彼氏?」
「わぁあ!………た、高野さんっ!!あ、えっ……いつから‥」
あたふたとしているあたしの隣の椅子に腰かけながら「メール入れとけば良かったね、の辺りかな?」
そう言ってタバコに火を点けた。
(お、怒ってらっしゃる…のかしら?)
「あの、すみませんでした!その仕事中にケータイなんて…」
高野さんに向かって深々と頭を下げたあたしの耳元で「それより、さっきの電話、彼氏なの?」
不謹慎ながらもドキッとしてしまった。
「あ、はっ?‥い、いいえ」
(なんだろう?…いつもの高野さんじゃないみたい…なんか……)
「木谷?」
呼ばれて我に返った。
「どこまで終わった?」
「あ、はい。あと1枚で全部おわりま―」
パソコンに向き直ろうとしたあたしを高野さんはグイッと引っ張った。
「え?あっ…たか…の‥」
―――ぴちゃっ。
「あっ…」
何が……何が起きているのか理解できなかった。
(な、なん?耳?なんで?やっ…)
頭ん中はパニック!思うように頭と体を動かせないあたしに高野さんは、なおも執拗に耳を舐めた。
―ぴちゃ、ぴちゃっ―
「あっ…んんっ!ひやぁ…」(なんで、こんな…いやぁ…)
「ぃやあぁ……あぁんっ!あっ、あぁっ…たす、けっ…ダ、メ‥」
「ダメって言いながら、そういう顔して喘いでも説得力に欠けると思うけど?」
あたしはカッとなった。
「い、いい加減にしてくださいっ!」
動けなかったあたしの体が、ようやく自由になるべく暴れだした。
「たっ、高野さんっ!じょ、冗談にも、ほっ、程がありますっ!」
どうにか彼の体から離れ、体勢を整えて涙目になりながらも毅然に振る舞おうとした。
「こ、こんなコトして‥それに、第一!た、高野さんおっ、お、奥さんいるじゃないですかっ!!」
はぁはぁと息切れしながら一気にまくしたてた。
「だから?」
「…はっ?」
この人、何を……
「だから、なに?」
そう言って一歩あたしに近づいた。
(あっ………)
「木谷ぁ、そういう顔してもダメだよ♪ねぇ?えっちしよっか?♪」
―――‥グイッ‥――
「んっ…!?」
高野さんの唇が…舌が中に…。
ダメだって頭の中じゃわかってた。流されちゃイケないって…。でも、あたしは………。
「んっ……ふぁあっ‥あっ…ダメ、たか、のさっ…」
あたしの息は完全にあがっていた。