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好き…だぁーい好きなんだからっ!
【幼馴染 恋愛小説】

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本当の優しさ-5

アスファルトを蹴っても蹴っても遠く感じる絆の家。

ダラダラと道を歩く通行人を、ライバルチームに阻止されつつもボールを蹴りゴールを
 目指すサッカー選手のように避け。普段はなんとも感じない赤信号が、自分の考えを
 否定し邪魔をする大きな壁のように疎ましく感じ。

それでも、生きたいと願う息子の想いを無視し、罪の意識も無く平然と日常生活を送っている冷血夫妻の元へ!

オバサンはキッチンで夕飯の支度をし、ソファーで野球を眺めるオジサンを頭に思い浮かべつつ、何気なく横に首を向けると。

「!!」

鳩が豆鉄砲を喰らったように、商店街の方から歩いていく、オジサン、オバサン、いずみ
ちゃん、を目にし、手にはビニール袋が。

私は目を尖らせ、消えかかっていた憎しみの炎を再び燃え上がらせ、ツカツカと3人の
 元へ。


「それでさぁー、あっ!杏お姉ちゃんだぁ」

最初に気づいたのはいずみちゃん、私に気づき何時もと変わらず無邪気に振舞い。
 その拍子に、オジサンそして一番の目的の人物のであるオバサンが目線を合わせ。

「こんにちは、どうしたの?」
「ちょっとね、……お兄さんの事で。」

と、愛想笑いしつつも、最後の方は口調を強ばらせ、オバサンに視線を向ける。

「……、いずみ先帰ってて。」

頭が切れ、勘の鋭いオバサンは、私のただ事ではない言い草を察し、何も知らないいずみちゃんに、そう重くない袋をいずみちゃんに押し付け、席を外すよう指示し。

いずみちゃんは頭上に大きな?マークを浮かべつつも、取り合えず言う通りにし、この場を去っていき。


近くの喫茶店に場所を移し、私、オジサン、オバサンとで三人で、さほど人気の無い落ち着いた場所で、取り合えずコーヒーを三つ頼み。

「それで?……何なの?」

気を取り直し、重たくゆっくりとした口調で、鋭い目つきで私に視線を合わせるオバサン

「貴女は彼を愛していないんですかっ!?実の息子を!」

こういう場では、幾ら頭に来ても、言葉を選び慎重な姿勢であるべきなのだが、まだ若く
他に気の利いた言葉も見つからない私は、直球に本音をぶつけ。

無論、息子の知り合いからの思いも掛けない台詞に目を丸くする二人。

「……どういう意味?」

一気に空気が重たくなる私達の席。

「彼は生きたがってるんですよっ!?リハビリして退院して、そして残り少ない人生を
 前向きに生きようとしているんです!、それなのに……」

口を開け、お互いを見合う二人、まさか知らないのか?

「リハビリって、彼は大人しく入院してたんじゃなかったの!?」

以前絆から聞いた話だと、自分が何時心臓病で倒れ入院する事になってもいいように、保健に入っていて、だがそれ以上の事は考えていなく、飛び降り自殺は想定内だったものの
予定通り、このまま病院で骨を埋めさせるつもりらしく。

「えぇ、彼は退院してもう一度学校に行きたい、そして僅かの余生をクイ無く過ごしたい
そう思って毎日辛いリハビリをやっているんです。それなのに肝心な親は」
「聞いてないわよっ!そんな話!」

言葉を遮り、大声を放つオバサン。

「あの…、コーヒーになります」
「あ……。」

丁度コーヒーを持ってきた店員がやって来て、怒号に動揺しつつも勤務をこなし。
 「落ち着きなさい」とでも言わんばかりにオバサンの肩に触れるオジサン。

運ばれたコーヒーをゆっくり口にし、冷静さを取り戻し。

「見舞いに来た時、「財布持ってきて」何て言ってたが、まさかリハビリに」

オバサンの隣で何一つ口を挟む事無く、ただ静かに視線をテーブルに腕を組み、耳を傾けるオジサンが呟き。

「杏ちゃん、貴女の言い方はまるで、私達があの子を放ったらかしにしてるみたいに聞こえるんだけど」
「だって、そうで」
「人の家庭の事情に首を突っ込まないでくれる!、苦しむ我が子を放置する親何か居る訳無いでしょっ!?」
「なら、どうして見舞いはそれ一回きりしか行かないんですか?」
「!!それは…」

オバサンの中で、稲妻が走り、目を泳がし。

「だって、だってあの子、何にも言わないんだもの、何時だってそう」
「もしリハビリしたいっ!って話したら、払ってくれるんですか?」
「…払って、んぅ。」

私の口撃に、すっかり弱るオバサン。それを見かねたオジサンが

「今日の所はこの辺にしてくれないか?オジサン達ウチに帰ってやることが」

逃げるのか?オジサンは当てになると思ってたが、困り果てた妻を優先し。
 目の前に置かれたコーヒーを一気に喉に流し込み、席を立ち。

「ちょっと、まだ話はっ!」

私も席を立ち、颯爽とレジで会計を済ませる二人の下へ駆け寄り。

「リハビリ代、出してあげて下さい!彼は、絆はっ!」
「また今度な…」

オバサンを抱きかかえたオジサンが、愛想よく私を避け、去っていき。
 追っかけても良いのだが、これ以上言っても無駄と思い、やも得ず断念し。

「……どうして。」

若くて絆の事しか頭に無い私には理解が出来なかった。




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