カミングアウト-1
「「うおっ、マジか!?」」
少しヒいてるような、呆れたような。そんな顔が2つ、まるで珍種の動物を見るような眼でこちらを見つめていた。
いや、確かに俺は珍種かもしれない。
二人の揃った声に、周囲の客が驚いてこちらを見ている。
俺は気まずさから、少し顔を赤らめて下を向いた。
「付き合ってもうすぐ1年だろ?」
驚きを隠せない、若干ひきつった顔をこちらに向けるのは、親友の修(おさむ)。
ああ、そんな顔で見ないでくれ。
「大山ってそこまでヘタレだったのか」
爽やかな見た目とは裏腹に、辛辣な言葉を投げかけてくる歩仁内(ぶにうち)。
やめてくれ、耳が痛い。
二人から責め立てられたような気持ちになった俺は、下を向いたまま汗のかいたグラスを持って、一気にコーラを吸い上げた。
そんな俺を見ながら、修は頬杖をついて呆れたようなため息を吐く。
その理由はわかっている。
「沙織もきっと待ってんぞ? いいかげんヤッちまえよ」
そう、俺は。
「ここまで来れば、忍耐強いとかじゃなくてただの意気地なしだな」
――付き合ってもうすぐ1年になる彼女がいるというのに、未だキスから先に進めていない、どうしようもないヘタレな意気地なしだったのだ。
ことの発端は数分前。
俺と修と歩仁内は、いつものごとく放課後にファーストフードに立ち寄って、バカ話をして盛り上がっていた。
元々仲の良かった修と、高3になってからつるむようになった歩仁内と。
俺たちは幸せなことに3人それぞれに彼女がいて、集まれば彼女らの話題が出てくるのは自然なことだった。