カミングアウト-4
正直に、まだヤってないと申告すべきか、見栄を張って経験者ぶるか。
この二択問題の答えを必死で探している俺は、こないだの定期考査なんかよりよっぽど真剣に考えている。
ふと顔を上げれば、どことなくニヤニヤしている修と歩仁内。
俺の答えがどんなものなのか期待しているようだ。
期待されると本当のことは言いづらくなる。
まあ回数くらいなら適当なこと言っちゃえば問題ないだろう。
「……週2回くらい……かな」
でも、根が正直者な俺は、こんな嘘ですら後ろめたくなってしまい、ついつい語尾が小さくなっていた。
「やっぱり、そんなもんかなあ。ていうか、二人っきりになれば我慢出来るか不安だったりして」
「お前、オレはずっと我慢してんだぞ」
ジロリと歩仁内を睨む修に、心の中で密かに同意していた。
「それはムード作んないと。どうせ土橋のことだから、桃子ちゃんと二人っきりになってもふざけてばかりなんだろ?」
「ふざけてなんかねえよ。オレはいつだって真剣だっつうの。なのにアイツときたら、笑ってごまかしたり、わざと話逸らしたりしてそういう雰囲気から逃げようとするんだ。まったく、どうしたもんかね」
修はそう言って頭の後ろで手を組んで、ドカッと背もたれにその身を預けた。
我慢してる身としては、俺と修もどうやら同じ立場にあるらしい。
でも、コイツとは決定的に違うのは、修はガンガン自分の気持ちを態度で表わしているけれど、俺はその勇気を出せるまでに至ってないってこと。
なんとなく、俺と沙織が済ませるよりも先に、修達の方が先に済ませてしまうのかもしれない、そんな気がした。
別に順番なんて関係ないだろうけど、経験のない俺にとっては結構重要な問題であったりして、密かに修に対して対抗心をメラメラ燃やし始めた。
そんな俺の心の内を知らない修は、俺の顔をジイッと見つめている。
シシシと白い歯を見せながら、どことなく悪巧みを考えているような笑みに、
「な、何だよ」
と、どもりながらも尋ねてみると、奴はニヤニヤした顔のまま、
「なあ、どうやってその気にさせたんだ?」
と、言った。