ウ-9
「本当に。中3の文化祭実行委員の時に里香が気になり始めたんだ。
告白される前には好きになってたんだよ。
あんなふうに別れてしまったけど、
今回のカウントダウンの話だって
もう1度、ダメもとで里香に近づきたいと思った。
あれから・・・どんなに数多く女の子と寝たって
心は晴れなかった。好きになんかなれなかった。
そんな子達と『デート』をする事すら思いつかなかった。
ただ、カラダの関係だったんだ」
「蒼く・・・ん」
「カウントダウンが『ゼロ』になるなんてうそだ。
里香と一緒にやりたいことはあとからあとから溢れてきて。
ゼロになんか絶対になりそうもない」
私も両手を蒼くんの背中に回して泣いた。
そこが食堂かなんてどうでもよかった。
「だったらもう里香を離すな!」
べーっと舌を出して
子供のように笑ったあと、佐藤は
「俺はピエロか!」
と言いながら食堂を出て行った。
「蒼くん。大好き」
「俺の方が好きだよ」
私たちは抱きしめ合いながらそんな言葉を
呪文のように唱えていた。
そんなバカップルな二人の行動は
あっという間に学校中に知れ渡って
どうやら蒼が本気らしい。
男も女も認めざるを得なかった。