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「瑠美、立ちなさい」
瑛美さんが、冷ややかな声で命じましたが、瑠美ちゃんはベッドにぐったりと倒れこんだまま、動きません。
瑠美ちゃんの体を覆うものは、いまや純白のパンティのみ。瑛美さんは、椅子に腰掛け、かつて瑠美ちゃんのおっぱいを覆っていたブラジャーを、ひらひらさせていました。
瑠美ちゃんは顔をクッションに埋めたまま、動こうとしません。
左のリボンは取れてしまっています。そして――泣いているようです……。
「立ちなさい、おっぱい奴隷の瑠美ちゃん。あなたの可愛い体を、お姉ちゃんにじっくり見せてちょうだい」
「ひどい……お姉ちゃん……」
瑛美さんが重ねて言うと、瑠美ちゃんは嗚咽交じりに言いました。
「ひどい……ひどい……おっぱい奴隷だなんて……」
瑠美ちゃんは顔を上げず、消え入りそうな声でしくしく泣き始めました。
瑛美さんは、ふう、とため息をついただけでしたが、やがて、
「わかったわ。もう言わない。約束する。だから立って」
しかし瑛美さんの言葉にも関わらず、瑠美ちゃんは動こうとしませんでした。
瑛美さんは黙って立ち上がり、ベッドの横を通り、窓際に立ちました。
冬の時間は早く、もう夕暮れ時でした。瑛美さんは、眼下の住宅地や少し向こうのマンションを見ていましたが、ふと、遠くの空で厚い雲が、夕日に照り映えているのに目をとめました。
「明日は雪みたいよ、瑠美。積もるといいわね」
瑠美ちゃんは、気づかれないようにちらっと、目を上げて瑛美さんのほうを見ました。 夕日を浴びた瑛美さんの横顔は美しく気品に満ち、髪には金色の光が踊っていました。
「瑠美ちゃん、あたしね、学校、辞めたのよ。退学になったの」
「え……」
思いもかけない瑛美さんの言葉に、瑠美ちゃんは上体を起こしました。解けた髪が、可愛いおっぱいの上辺をくすぐりました。
背中を向けたまま、瑛美さんは続けました。
「まあ、あたしが悪いんだけどね。いろいろやったから」
「だってお姉ちゃん、あの学校、すごい勉強して入ったじゃない。あたしじゃ絶対入れないもん」
瑛美さんの通っていた学校は、県外どころか全国的にも名を知られる、有名な進学校です。
一瞬、瑛美さんの表情に懐かしさとも悔しさともとれる色が浮かびましたが、後ろにいる瑠美ちゃんにはわかりませんでした。
瑛美さんは、振り向き、瑠美ちゃんに近づきました。瑠美ちゃんはハッと気づき、毛布で胸元を隠し、くるりと後ろを向きました。
「ル・ミ」
まるで歌うような抑揚で、瑛美さんは言い、布団ごと、毛布ごと、背後から妹の体をだきすくめました。
「いや」
まるで巻きつくように、瑛美さんの細い指が再びのどの辺りを愛撫し始め、早くも胸元に入れてきましたが、瑠美ちゃんの口からは、硬い拒絶の声が漏れました。
ぴたり。瑠美ちゃんのおっぱいの上を滑る瑛美さんの指が、止まりました。
「もう、怖いことしないで」
瑠美さんは、言いました。
「何があったか知らないけれど、乱暴なお姉ちゃん、きらい」
「乱暴?」
「そうよ。もうお姉ちゃんの言うことなんか、聞かない。触らせても、あげない」
しばらく、気まずい――少なくとも瑠美ちゃんにとっては――沈黙が、辺りを支配しました。
お姉さんの体の、体温ではない何かが冷えてゆくように感じられ、瑠美ちゃんはちょっと怖くなりました。
「わかったわ。ごめん。あたしもちょっとイラついてた」
瑛美さんは言いながらも、再び手を動かし、瑠美ちゃんの乳首に触れました。
「でも、体は正直ね」
「あ、あん……いや……」
「硬くなってる。くりくりしようかな」
「もうっ」
瑠美ちゃんがもぞもぞ動くと、瑛美さんは素直に手を離しました。そして今度は瑠美ちゃんの髪を手に取って、
「ごめんね。リボン、直してあげるから」
瑠美ちゃんの耳元に熱い息をふきかけることも忘れずに、ささやきました。
「うん……」
こうなると、もう元の優しい瑛美お姉さんです。瑠美ちゃんも、されるがままに、黄色いリボンを直してもらいました。
「ちょっと早いけど、ごはんにしようか」
「うん」
「あたし作るわ」
「うん、でも瑠美、お風呂入りたい……」
リボンをつけなおし、瑛美さんがベッドから降りると、背中に感じていた瑛美さんのおっぱいの感触を失った瑠美ちゃんは、急に子猫のような甘え声を出しました。