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真里菜の憂鬱
【兄妹相姦 官能小説】

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真里菜の憂鬱-1

(1)


 隣の部屋から兄の亮輔と美咲の笑い声が聞こえる。
真里菜は少しいらいらしていた。
(いつまでいる気だろう)
もう一時間近くになる。

 ほんとうは家に呼びたくなかった。
(一緒に勉強しようって言うから……)
仕方なく応じたけれど、美咲の目的はわかっていた。
(兄に会いたいから……)
彼女もばればれの口実なのは承知で、隠すつもりなどさらさらないのだが、
(相手が私の兄だから一応ついでとして私の家に来る切っ掛けを作っただけなのだ……)
少し面白くなかった。

 上沢真里奈は中学二年、島谷美咲は同級生である。小学校から同じクラスでいつも一緒に行動するほど仲良しだった。兄は高校一年で去年まで同じ中学に通っていた。
「お兄さんって、かっこいいよね」
入学して間もなく美咲がちょっと照れくさそうに言ってきた。
「そうかな……」
「そうだよ。真里菜は兄妹だからわからないんだよ」
「家ではだらしないんだ。部屋は汚いし」
「男はみんなそうよ。あんまりきちんとしてるのって、いやだよ」
「そうかしらね……」
言葉を濁して関心のない振りをしたが、内心兄を素敵だと思っていた。吹奏楽部の部長として入学式に校歌を指揮した姿はとても頼もしくてずっと見つめていたものだ。
 
 仄かな想いを抱いたのは小学校三年の時からで、はっきり憶えている。なぜならその齢に二人は出会ったのだから。

 真里菜と亮輔は血のつながりはない。彼女の父と亮輔の母親が結婚したのである。
「亮輔、今日から妹になる真里菜ちゃんよ。仲良くしてね」
「亮輔くん、よろしく頼むね。親子になったといっても、難しいこともあるだろうから、焦らずやっていこう」
『兄』の顔は何だか怒っているように見えた。

 父と母は職場である病院で知り合った。父は検査技師、義母は看護師である。
実母は三年前に病死して、真里菜は父方の祖父母の元で育った。亮輔の家庭事情はよく知らないが、離婚だったようだ。

 新しい母を迎えることを自分でどのように受け止めたのか、今になってはわからないのだが、たぶんその時も抵抗がありながら、事態の流れるまま現実に流されたのかもしれない。それに、単純に割り切っていた一面もあったように思う。
(お母さんができた……)
もう母の日に暗い気持にならずにすむ。
 むろん、亡くなった母を忘れたわけではないが、ふたたび普通の家族の形が出来たことにほっとした気持ちもあった。

 結婚と同時に一戸建ての新しい家に住むことになったのも子供ながら過去への決別のようで新鮮な気持ちになった気がしたものだ。鍵のかかる個室を持ったのも初めてのことだ。これまでは古い団地住まいで仕切りは襖であった。別に不自由は感じなかったけれど、やっぱり自分の部屋ができたことは嬉しかった。
(私の部屋!)
祖父母と別れるのは淋しかったが、バスで三十分ほどで行ける距離だったので深刻な悲しみは感じなかった。
 学区が違ったので転校することになったが、これはむしろ幸いに思った。親の再婚を知られることがなかったからである。だから亮輔とは傍目には実の兄妹として生活を送ることが出来た。

 四人の暮らしが始まって間もなく、両親とも夜勤が重なる日があることを知った。
「月に一度か二度、どうしてもローテーションでそうなっちゃうの。明日の夜は戸じまりして、二人で留守番しててね」
父が夜勤のことはこれまでもあったが、祖父母と一緒だったから淋しいこともなく当たり前に受け止めていたものだった。
 今は祖父母はいない。でも、一人ではない。まだ親しくはないが『兄』がいる。
「もう三年生だから大丈夫ね」
母に言われ、
「うん、平気」
不安もなく言ったものだ。

 しかし、夕方両親が出かけて兄と二人きりになると、何となく居心地が悪かった。一緒に夕食を食べていても会話らしい会話もない。テレビを観ていても気詰まりな感じで、
(早く自分の部屋に行きたい……)
思いながらなかなか動くことが出来なかった。
 先に動いたのは兄である。
「ぼく、宿題するから」
断るみたいに言って立ち上がった。
「うん」
ほっとしたのを憶えている。

 ところが、後片付けをしてお風呂に入った頃から少しずつ心細い気持になってきた。あまりに静かなのである。この辺は集合住宅はないし、新しい分譲地なのでまだ空地もある。団地では何かしら物音が聴こえていたものだ。早々にお風呂を出た。
 リビングの明かりを消して逃げるように階段を上って部屋に入った。

 隣の部屋には兄がいるはずだが、寝ているのか、気配が聴こえない。嬉しかった個室がひとりぼっちで閉じ込められた気持ちにさせる。
 灯りはそのままにしてベッドに潜り込んだ。
(お祖母ちゃん、お祖父ちゃん……)
思い出すと無性に団地に帰りたくなったが、こんな夜に一人で行くことはできない。ひとりでに涙があふれてきた。

 ノックの音が聴こえた。
「真里菜」
兄だった。
「はい」
「どうした?」
亮輔の顔を見たとたん、涙がさらに込み上げてしまった。
「お兄ちゃん」
そう呼んだのはその時が初めてだった。
「あたし、淋しくなっちゃった」
「そうだったのか。どうしたのかと思った」
亮輔の笑顔はとても温かくて優しかった。
「ぼくの部屋に来る?一緒に寝ようか?」
「うん」
真里菜は枕を抱えて飛び起きた。淋しさが一瞬で消え去った。

「ぼくも淋しかったんだ」
ベッドで身を寄せ合うと亮輔が言った。
「お兄ちゃんも?」
母子家庭だったので母は泊まりの仕事をしなかったという。
「でも、家のローンとかお金がかかるだろう?だから我慢しような」
「うん」
兄の胸に顔を埋めながら、真里菜はとても柔らかい想いに包まれた心地だった。 

 
 
 
  


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