ト-2
やっとの意志でお互いに唇を引き離し
蒼くんは自分の胸に私の頭をかき抱いた。
「里香。ここ・・・外」
「ん」
ドキドキして呼吸をするのがやっとで
蒼くんの言葉に、たった一言、返事をするのがやっとだった。
「うち来るか」
それは決定権を私にゆだねていて
私の一言で、決まる。
なんて答えようか一瞬の間が空いた後
「里香。俺の部屋に来いよ。
二人で『彼の部屋の訪問』をカウントしよう」
5年前、きちんと付き合っていたら。
そのうち蒼くんが部屋に招待してくれたかもしれない。
私はきっとドキドキしながら
そのお誘いに「うん」と言ったんだ。
あの時出来なかったことを、今するんだ。
「行く」
私は自分の意志でそう答えた。