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It's
【ラブコメ 官能小説】

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「陽向ちゃんはー、将来看護師になるんでしょ?」
「そーですよー」
二次会で生きているなんて奇跡に近い。
大介は、なかなかコアなファンが多く、なぜかそのファンたちに潰され、海斗はかなりお酒が強くルックスも手伝ってか、群がる人達とベースについてアツく語っていた。
ベース好きな人は、ちょっと…いや、相当変わった人ってか変態な人が多いと思う。
海斗は変態じゃないけど。
でも実はムッツリかもしれない…。
洋平は洋平でいつものあのテンションとキャラで周りを盛り上げていた。
結局二次会まできたのはFive woundとHI wayだけで、洋平は何故かジョージに絡みまくっていた。
陽向はというと、かなりメジャーなバンドの話をふっかけられたり、CD出さないのかとかそういう類の話を延々とされていた。
現に今日、CDの話はライブハウスからされた。
今日ライブをさせてもらったライブハウスはかなり大手のプロダクションとも関係のある大きなところだった。
でも、断った。
自分達が求めているのは、そういう事ではないから。
CDを出させてもらえたり、レコーディングさせてもらえるのは本当にありがたい話だと思うし、本気で売れたいと思っているバンドならば、はい!よろこんで!と言う話だと思う。

でもさ…。

その時大介は言った。
「CD出したとこで何になるの?お金?俺はそーゆーの求めてないし、ただ単にバンドが好きだからやってんの。売れるのはそりゃありがたいけど、その先のこと考えてみ?……結局売れる曲のこと考えて生きる人間になるんだよ、いずれ。そんなのに縛られるバンドだったら俺はやりたくない」
と。
全員、その言葉に反対の意見はなかった。
「音楽が、ライブが好き」と「売れたい」は紙一重なんだと思う。
前者の延長上できっと欲が出てきてしまった人もたくさんいるだろうし。
でも、それは違うんじゃないか、と陽向は思った。
そんな話をされてから、そういう人たちの立場や思いも分かったのは事実。
…でも。
解散してしまう理由は、方向性の違いがほとんどだけど、きっとその中には「好きな音楽」と「売れる音楽」が、あるのではないかと。
きっと、売れたいあまりに自分の好きなものも見失ってしまったのではないのだろうか。
だから、今より先の人生を考えるのが怖かった。
自分は音楽が好きだ。
何よりも愛している。
こうしてたくさんの人と出会って言葉を交わして、くだらない会話でも楽しいと思える。
人は認められて初めて快感と心の拠り所を覚える。
前の自分だったら…?
間違いなく「CD出したい!」そう思うだろう。
でも、今そう思わないのは、音楽と仲間と自分を知ったからだ。
ゴールを見つけるのが目的じゃない。
やりたいこととゴールは違う。
だだ、それだけの話だ。
ゴールなんてない、それがHI wayの答えだ。



明日から研修が始まる。
どんな職場なのだろうか。
同期と上手くやっていけるのだろうか。
怖い先輩いたらどうしよう。
そもそも、ちゃんとした看護師になれるのだろうか。
不安しかない。
「今日は曲でも作るかね」
そう言って、バンジョーではない小さなアコギを片手に持ってきた湊と過ごす、社会人になる前の最後の休日。
心地よい旋律が鼓膜を刺激する。
「新曲できた?」
「ん?まだ途中」
ギターを弾く湊の左肩にそっと頭を乗せる。
この時間が永遠に続けばいいのにな……。
そんな事を考えながら陽向は目を閉じた。
「また寝ちゃうの?」
湊のクスクスと笑う声がする。
今日も、明日も、あさっても、ずーっとその先までこうして大好きな人と一緒にいたい。

開け放した窓から、ふわっと春の香りが部屋に流れ込む。
今日は快晴。
お散歩日和だ。
でも、家の中でこうして過ごそう。
まだ見ぬ未来を思い描きながら。
大好きな人と2人で。





おわり


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