7.罪より先に与えられる罰は無い-8
毛先はトップスがフィットして優美に膨らんだ丸みを確かめるように、山裾から円を描き、かつ細かな振動を加えながら徐々にその円周を狭めて、登ってきた。
「はっ……、く……」
わずかに開いた唇の間から、小さい、しかし熱く湿った声が漏れた。
村本は確かにその声を聞いた。これまで映像メディアに登場した時に聞かされた声とも、あるいは今日これまで悠花に聞かされた声とも、どれともつかない、少し鼻にかかって甘みが混ざったものだった。この声を聞ける男は世の中にはそういない。しかも歯ブラシにバストを攻められ始め、何とか耐え抜こうと渾んだ表情を浮かべてはいても、毛先の動きに呼応するように身を振るわせて、漏らす声……。そんな声を聞ける男は、悠花の体をこうして自由にできる者だけなのだ。そう思うと、股間に溶けてしまうほどの快楽が渦巻いて、まるで射精寸前ように男茎が根本から喘動した。
「ほぉら……、悠花ちゃん。オッパイ……、悠花ちゃん自慢のFカップのオッパイ、気持ちいい?」
「く、……そ、そんなわけない、でしょ」
悠花は辛うじて言うが、今にも瞼は閉じてしまいそうなくらい、長い睫毛が震えていた。
「ふふっ……、悠花ちゃん、これだけキレイなオッパイしてるのにぃ……、結構ビンカンなんだねぇ。歯ブラシでイジられてプルプル震えちゃってさぁ……」
「だからっ……、何でもない、って言ってるでしょっ!」
体を支配してきている感覚を、男を前にして認めるわけにはいかないくて、半ばムキになって言い返すこと自体、歯ブラシでの愛撫が有効であることを認めているようなものだった。ゆっくりと、男ならば渇望し、女なら羨望するような、ラメ生地に包まれたバストを、たっぷりと時間をかけてなぞり回してくる。
「は、悠花ちゃん。悠花ちゃんの乳首はぁ、……ど、どこかなぁ?」
と言っているくせに、毛先はバストの中腹から一向に登ってこず、麓との間を往復しているのみだった。しかしそれだけで、悠花の美乳は内部から巻き起こるようなゾワゾワとした感覚に充たされていた。
「どこでもいいでしょ……」
そうは言っても、もし毛先がトップスの上からでも、より集中している雛先に到達したら、もどかしいまでに胸乳で滞留している性感が、どうなってしまうのか想像つかなかった。
(絶対イヤだ……。こんなヤツの前で……)
もう身体は、ムズムズした焦燥を癒してもらいたくなっている。いくら「心を無にして」と自分に言い聞かせても、悦びを求め始めた身体がどんどん意志から離れていっている。何とか引き戻そうと、歯ブラシの動きに反応しないように精神を集中するが、
「……ンッ!!」
急にもう一方の丸みへ飛び移られ、同じように毛先がなぞり始めると、小さいながらも悲鳴のように高い吐息が漏れてしまった。
「ほらほらぁ……、ん〜? 悠花ちゃん。やっぱりちょっと感じてきたんじゃない? Fカップ、イジくられてさぁ……。こういう風にされるの、実は好きなんでしょ?」
村本の揶揄にカッと頬が熱くなった。
そんな馬鹿げた男の妄想どおりの女など、世の中にいるものか。直感的には、男の言質に対すて反駁しか起こってこない。しかし一方で、自分の体に巻き起こっているこの――もう「性楽」と認めざるをえない、その感覚を認識しているからこそ、羞恥心も同時に巻き起こってくる。
(そんなわけない……。そんなわけないっ……)