7.罪より先に与えられる罰は無い-2
「だから、あんたなんかと何したって、そんな風になるわけない、って言ってるし! バカッ! 変態っ! さっさと解いてよ、はやくっ!」
しびれを切らした悠花は、男の言葉に思わず声を荒げてしまった。
「そぉ? でもさぁ、どぉせパンティもらうならぁ……。今の、ほら、悠花ちゃんの朝から履いてるニオイ、味が染み付いてるパンティでもいいんだけどぉ……。やっぱり、ねぇ。……あはっ」
罵声を浴びせかけても全く怯んだ様子もなく、下着への曲がりきった嗜好を、その本人に向かって懇望してくる。
「……何言ってるの?」
「は、悠花ちゃんの、エ、エッチなシミ付きとか、欲しいじゃん? 瀬尾悠花ちゃんのシミ付きパンティなんて、レア中のレアアイテムだもん。今の彼氏でも、今までの彼氏でも絶対、持ってないでしょぉ?」
男の呆れた欲望に絶句した。何をふざけたことを言っているのだろう、と思った。感じるわけがない、とこれだけ言っているのに、下着を汚すなんてまず有り得ない。ここまで変態性を見せつけられてきて、男に対して嫌悪感しか感じていなかった。なのに、まだなおそんな馬鹿げた期待をしているとは、本当に思考能力がどうかしているとしか思えなかった。
「ほんと……、ほんっとーに、バカなんだね。そんなんだから女の子に相手にされないんだよ、きっと」
「くくっ……、たしかに、シミ付きパンティをくれる女のコなんて、なっかなかいないからねぇ」
「そういうことじゃないし。あー、もうっ……、話通じなくてイライラするんだけど」
村本とて本気で分かっていないわけではなかった。むしろ昔から女性に相手にされて来なかったからこそ、こんな欲望は内奥に秘め持っているべきだときちんと理解していたし、どんな女性でもこんなことを言われたらドン引きしてしまうことも知っていた。しかし今の自分は、最上位レベルと言っていい美貌と好スタイルを持った美人モデルに対し、臆面もなくそんな下劣な要求をできる立場にあるのだ。
ドン引きしようと何しようと、悠花は要求に従わざるをえない。ただし、ただ言うことをきかせるよりも、そのプライドをネチネチと刺激し、自分の妄欲をはっきりと分からせた上で、屈服させたい。
「まあ要は、絶対感じたりなんかしない、ってことなんだね?」
「あったりまえでしょ?」
「本当? 絶対に?」
「しつこいな。絶対、ありえないから」
何故か男はその言葉に、んぐっ、っと呻いて、亀頭の先から垂れていた透明汁をピュッと上に飛ばした。雫は宙を飛んで、エアマットの表面に、中が空洞であるからポタッ、ポタッという音を響かせて落ちる。
「やっ……!」
悠花はブーツの踵のすぐ近くに落ちたことに驚き、膝を曲げて脚を引き寄せようとしたが、
「……なら、何はともあれ試してみようよ、悠花ちゃんっ!」
と、突如ブーツの足首を両手で掴まれ、引き寄せにかかられた。ブーツを履いていては踏ん張ることはできず、二の腕に力も入れられない。更にはデニムミニに包まれた臀部では、ナイロン素材のエアマットには滑りやすく、下半身は容易く引き寄せられ、脇を開き、腕が伸びて、背中をマットについてしまった。
(……付いた。お尻に……、付いた)
男が飛ばしてマットに落ちていた透明汁の上に身体を滑らせてしまった。デニムミニは悠花のものではないが、身につけているものに男の不浄の体液が付着したことに、想像していた以上の汚辱感が湧いてきた。
「やめてっ……! ……やめろっ! ……離せっ!」
男に掴まれていない方の脚を蹴るようにバタつかせた。高いヒールが男の太ももか腹に当たった感触があり、短いうめき声が聞こえたが、それでも男は足首をしっかりと掴んで離さなかった。