7.罪より先に与えられる罰は無い-13
「は、悠花ちゃん……、クリ好き? クリトリス」
(……!)
首筋やわき腹、そして性感を高められたバスト、脚――、もう愛撫は一時間をゆうに超えていたが、悠花の性悦が最も集中する、薄布に包まれた艶やかな秘丘には、まだ一度たりとも刺激が加えられていなかった。これまでの愛撫がまるで最後の場所をより敏感に、もどかしくするための布石であったかのように、頼りない薄さの下着一枚でのみ防御されているそこへの、直接の攻撃が宣告されたのだ。
(ムリッ……、絶対ムリ……)
一つは村本のような醜男に、女として最も大事な、恋人以外を受け入れる筈のない部分を蹂躙される屈辱を、耐え忍ぶ自信がなかったからだ。そしてもう一つは、ギリギリまで敏感にされてしまったスカートの中へ、直接歯ブラシが襲いかかってきたら、体の奥から噴出する悦びの証を押し留める自信がないからだ。
「んふっ……、こ、答えてくれないんだぁ? じゃ、調べてあげるしかないねぇ……」
押し黙る悠花の脚の付け根に向かって、歯ブラシが縦に降ろされていく。
「ダメッ……! やめて!」
声を上げて拒絶しても、歯ブラシは体の中心線上、見事にシェイプアップされた下腹部を覆うデニム生地の上に降り立った。厚手のデニム地越しでは、毛先の感触は殆ど感じられない。ゆっくり足元のほうへと移動を始める。
だが物理的な接触はないのに、まるで何か虫が這っているのかと思えるほどの微細な掻痒が衣服の中の肌を這った。性感の中枢へ向かって動き始めた、と意識してしまうと、デニムミニの中へ向かって先回りして集まってくるかのようだった。
「あっ! 待って待って! ……ちょっと待ってって!!」
その這い虫の感覚が、ショーツの丸みを覗かせるまで捲れているミニの裾にまで到達すると、思わず男を制する声を上げてしまった。悠花の訴えは、焦りを表明しているようなものだった。
男は無視して……毛先を下着の前面へ、トンと降り立たせた。一転、下着の薄布一枚越しになると、与えられる感覚は観念的なものではなくなった。ヘアの辺りを無数の触糸で歩き、柔らかな丘の奥地を目指して進んでいく。
何とか侵入を防御しようと脚をピッタリ閉じるが、まったく意味はなかった。恥丘の頂とピッタリ閉じ合った脚の間には、三角の隙間ができている。悠花の理想的なスタイル、理想の美脚によって成された空間によって、かえって壁面に息づく秘所は守られていなかった。
「だからっ……待って! 止めてっ、手ぇっ……!」
もう少しで届く。
小さな肉粒は、男に抱かれてきて、愛撫を受けると如実に反応してしまうポイントであることは、自分でもよくわかっていた。最も弱い部分の一つだ。
しかもそこは、歯ブラシによる執拗な愛撫からは取り残されていたために、熱くなって、身を捩った拍子に薄布が少し擦れてしまうのでさえも恐れなければいけないほど、鋭敏になっている。
何とか侵入を防がないと……、と次の言葉を発しようとした瞬間、無情にも毛先は急に歩を速め、三角の空間へヘッドを差込んだ。
「あぁっ……!」
少しブラシ毛が反るほどの力で微動だにせず、鋭敏な粒に密着していた。だが、移動の遅いペースに油断していた悠花は、それだけで身体の奥から、ドクッ、と熱い体液を漏らしてしまっていた。ここまで我慢の末に漏れてしまった量よりも、ずっと夥しい量だった。
思わず瞳を閉じてしまって、歯を食いしばり、毛先が動いていない隙に何とか身体の奥の脈動を押さえようとする。
「ほぉら……、悠花ちゃん? 目閉じたらダメだってぇ……」
男は見逃さない。ピッタリと歯ブラシをクリトリスに添えたまま、顔を覗き込んでくる。
「ん……、ちょ、どけてっ……、それ」
ゆっくり長い睫毛を開くと、男へ訴えた。