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歪な氷雪─いびつなひょうせつ─
【近親相姦 官能小説】

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歪な氷雪-14

「ひょっとして、オリンピックに刺激されたのか?」

「それもあるけど……」

 美羽の声がわずかに落ち込み、けれども懸命に胸の内を明かそうとする。

「お母さんが見てた景色を、あたしも見てみたくて」

 何を生意気な、と雅治は言おうとしたが、その台詞がうまく言葉にならなかった。

「よく考えたら、あたしにはお母さんとの思い出があんまりないじゃない?雪崩のことだって記憶にないし、気がついたらお母さんだけがいなくなってた」

「おまえはまだ三歳だったからな。覚えてないのも無理はない」

「あっという間に十六歳になっちゃった」

「俺だって歳を取ったよ」

「けど、お母さんは歳を取らないんだよね、永遠に……」

 美羽は遠い目をし、やがて父を見た。

「一泊二日のスキー合宿。いいでしょう?」

「日帰りじゃだめなのか?」

「だめ」

 美羽がぴしゃりと言う。ここまではっきりと言うのだから、おそらく宿泊先の候補地などもすでに決めてあるのだろう。
 可愛げがあるのやら、ないのやら──と雅治は呆れながら自分の鞄に目を移した。その中に借りてきたDVDが入っている。

 手懐(てなず)けられない性欲を騙し騙しやり過ごし、発散させて、教本どおりの父親として娘に接してあげなくてはいけない。
 たった数百円の手頃な値段でそれが叶うからこそ、自分はこうしてわいせつなDVDを借りているのだ。
 これがなければ今頃は──と雅治は不気味な妄想を描きそうになり、やがて美羽の全身に視線をめぐらせる。

 汚れを知らない天使なのだとあらためて娘のことを思った。
 そして、美登里の才能を受け継いでいる可能性を考えた。
 母から娘へと才能のバトンが渡っているのなら、意欲が消えてしまわないうちにその才能を伸ばしてやらなくてはならないだろう。
 今はまだ冬眠中の蕾だが、手を差し伸べて愛情を注いでやれば、いつかかならず開花するのではないか。

 雅治は、ダイヤモンドダストを浴びて舞い踊る美羽の姿を容易に想像できた。
 そして雪上の競技の過酷さも知っている。一瞬の判断ミスが明暗を分けるのだ。
 白銀の斜面に飛び込む度胸と、何事にも動じない精神力、どちらか一方が欠けてもたちまち大怪我をする。
 ようするに、雪だるまになるだけでは済まないということだ。

「どうせならご飯がおいしくて、温泉があって、夜景の綺麗なところがいいな」

「おいおい、まだ行くと決まったわけじゃないだろう」

「行くと言ったら行くの。ぐずぐずしてたら春になっちゃう」

 そんなわがままにおどけつつも雅治がいい返事をすると、美羽の頬にほんのりと赤みが差し、直後には満面の笑みに変わった。


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