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歪な氷雪─いびつなひょうせつ─
【近親相姦 官能小説】

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歪な氷雪-15


 8


 薄っぺらい円盤が機械の中へと飲み込まれていく。その様子をじっと見つめる目に迷いが浮かぶ。

「今の世の中は得体の知れない性癖で溢れているからね」

 丹波直樹の台詞がよみがえってきた。

「一泊二日のスキー合宿。いいでしょう?」

 今度は美羽の台詞である。雅治は頭痛を堪えるように頭を抱え、自分と関わりの深い人々の言葉を吟味していた。
 とくに「一泊二日」という響きには過剰に反応した。
 旅先で得られるであろう開放感に理性をくすぐられ、道徳に背いた行為にはしってしまうかもしれない。
 それはつまり、実の娘を凌辱することを意味する。

「まずいよなあ……」

 つぶやきながらテレビ画面をうかがうと、DVDの映像が再生されていた。
 夕方のこの時間、美羽は学習塾に行っている。だからこそ雅治は、

「今日は俺が酒を奢ってやるよ」

という会社の同僚からの誘いも断り、まんまと独りきりの時間を手に入れたのだ。
 本来ならばオリンピック特別番組を視ながら感動を味わっているところなのだが、目の前の映像からはそういった感動がまったく伝わってこない。
 まるで有害なものでも見せられているような気分だった。
 それでも雅治はテレビにかじりついた。

 一組の男女が映っている。二人は血の繋がった父娘でありながら、ただならぬ関係に身を尽くすことになる──という淫猥な前書きが浮かんで消えた。
 いわゆる近親相姦に値する行為である。
 たとえばそれが一方的な狂気でも、もしくは相思相愛であっても、父と娘は決して交わってはならないと人は言う。

 雅治はとくべつ悶々としていた。そして再生画面に固唾を飲む。
 週刊誌の袋とじを開くのとはまた違うときめきをおぼえた。

 映像の前半部分は、およそ女の子の成長記録だった。
 それは母親の乳房に吸いつく新生児からはじまり、一歳の誕生日にはケーキにやんちゃをする姿を、保育園のお遊戯会では歌をがんばる様子を、そして赤いランドセルが似合う年頃になった女の子の六年間をカメラが追っている。
 夏の思い出は水着でプールに飛び込んだことや、浴衣を着て打ち上げ花火を見たこと。
 冬の記憶はクリスマスとお正月を家族で過ごしたこと。
 そんなふうに少女のいろいろな場面を切り取り、つなぎ合わせて、映像はいよいよ後半へと差しかかる。


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