茉莉菜の日記......-5
月曜日、久しぶりに学校に行くと
「葛城!聞いたよ!美浦とつき合ったんだって?」
拓弥が飛んで来た。
「ああ....誰から聞いたんだ?」
「伊藤だよ!彼女から聞いたんだって!」
あの時、一緒にいた瑞希ちゃんから初音ちゃん、それから俊輔、そして拓弥の流れか......隠しているわけではなかったが、なんか照れくさかった。
「今までずっと休んでいたけど、美浦と一緒だったのか?」
「まさか!俺はずっとバイトだよ!」
「バイト?」
その時、後ろから声をかけられた。
「チョコレートの魔術師だもんね!」
振り返ると、笑顔で姫川さんが立っていた。
「チョコレートの魔術師?」
拓弥が不思議そうに呟いた。
「葛城君の才能は、ボクシングだけじゃなかったのよ!でも....バイト先にも亜梨紗さんが来てたじゃないの!」
姫川さんが意地悪そうに笑うと
「姫川さん?」
「私、この目で見たよ!亜梨紗さんがピアノを弾いている姿を仕事の手を止めて見つめている葛城君を!」
「えっ?」
不覚にも俺は真っ赤になってしまった。そんな俺達の会話を聞いていた拓弥は複雑な顔をしていた。
「姫......」
「二岡君、そんな顔しないで!私は別に気にしてないよ......っていうにはまだ辛いけど......仕方ないじゃない?それに、二岡君は亜梨紗さんの友達なんでしょ!そんな顔しないで二人を祝福してあげないと!」
姫川さんにムリして笑顔を見せた。
「葛城!お前はこんないい子をフッたんだ!美浦と幸せになれよ!」
拓弥は俺の首に手を回して抱え込んだ。
「ちょっと待て!俺は別に姫川さんをフッた覚えは........」
「五月蝿い!」
拓弥は首に回した腕に力を込めた。
「拓弥!ギブ!ギブ!」
俺は拓弥の腕を叩いたが、拓弥は力を抜いてくれなかった。
「姫川さん、笑ってないで助けてよ!」
「って言ってるけど、どうする?」
拓弥は姫川さんを見た。
「そうだな....もっと力を入れてもいいわよ!二岡君!」
姫川さんは笑っていた。
「姫の御命令ですので!」
拓弥は力をさらに入れてきた。
「拓弥!お前はどっちの味方なんだよ!」
「決まっているだろ!俺は姫の忠実な下部だ!」
聞いた俺がバカだったと実感した。
授業..といっても自習に近いモノだが..それを終えて帰ろうとすると校門の前で亜梨紗が寒そうに立っていた。
「亜梨紗!何してるんだよ!」
慌てて近寄ると
「ああ......純....今、終わったの?」
「風邪をひいたらどうするんだよ!」
亜梨紗の手を握ると、氷のように冷たかった。
「お前、どれだけ待っていたんだよ!」
「ほんの二時間くらいかな......」
「二時間くらいって....電話かけてくれればいいのに......」
「したさ!何度も!でもお前出てくれなかったじゃないか!」
「えっ!?」
慌てて携帯を捜すと、忘れて来たみたいで見当たらなかった。
「ゴメン....忘れて来たみたいだ....でっ何かあったのか?」
「あるから待っていたんだろ!叔母さんが話があるんだって!」
「翔子さんが?」
「ああ....来てくれる?」
「もちろん!」
俺達は翔子さんが日本のオフィスと住居を兼ねているマンションに向かった。