ワスレナグサの花言葉-5
すると、待ってましたと言わんばかりに、おばさんは得意気な顔になった。
それがおばさんの策略だったのかもしれない。
次の瞬間、彼女はニッコリ笑って、
「エゾムラサキって言うの」
と、答えた。
「エ、エゾムラサキ……?」
はっきり言って、拍子抜け。
聞いたことのないマイナーな花の名前に、興味はすっかり削がれてしまった。
正直、こんなのいらない。
封筒を見つめていたあたしは、こういうのはお花を育てるのが好きな人がもらうべきだと思い、彼女にこれを返そうと決めた。
……だけど。
「エゾムラサキって言ってもピンとこないか。ワスレナグサって言えばわかるかな? 英名『forget-me-not』、花言葉は『私を忘れないで』。とても可愛くて、優しい花よ」
その言葉にハッとあたしは顔を上げる。
――私を忘れないで。
おばさんが突拍子もなくくれた花の種。
だけど、その花言葉を聞いた途端、突き返すはずの白い封筒は、あたしの膝の上に再び落ち着いていた。