投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

forget-me-not
【女性向け 官能小説】

forget-me-notの最初へ forget-me-not 110 forget-me-not 112 forget-me-notの最後へ

ワスレナグサの花言葉-4

「……何ですか、これ」


「それね、2,000円以上お買い物をしてくれたお客さんにあげているオマケなんだけど、あなたにもあげる。花の種よ」


「は?」


言われて鼻をすすりながらも、封筒を小さく上下に振ると、シャカシャカ音がする。


いきなり何?


突飛とも取れる彼女の行動に、あたしは眉をひそめたまま封筒とおばさんの顔を交互に見やった。


「秋蒔きの種だから、もう少ししたら植えられるわ。あなたの家は庭がある?」


「え、何言って……」


「いいから。あなたの家は一戸建て? それともマンション?」


「アパートで一人暮らしですけど」


「あら、そう。じゃあプランター用意すればいいわ。これは直蒔きできるし、育てやすいのよ。あ、ただ種蒔きの時は、一晩水につけてあげて、それから……」


「ちょ、ちょっと待って! あたし、そういうの興味がない……」


勝手にドンドン話を進めるおばさんを制するように、あたしは慌てて彼女の言葉を遮った。


ホントに何なの、この人。


確かに他人にいきなり泣きわめくあたしもあたしだけど、突拍子もなく園芸のレクチャーを始めるおばさんもおばさんだ。


まったく噛み合わない二人の空気に、あたしは戸惑ってばかり。


なのに、能天気なおばさんは、あたしが興味がないって言ってるのに、楽しげに話を続けた。


「このお花は育てやすいけど、乾燥と冷たい風を嫌うから、そこは注意してね。心を込めて育てれば、来年の春にはきっと可愛い花を咲かせてくれるから」


「だから、あたしはそういうのは……」


「あなたは美人だし、薔薇みたいな華やかな花ももちろん似合うけど、こういうささやかな花も可憐な感じで、きっとよく似合うと思うのよね」


何だかすっかり営業トーク。


普段からお客さんと長々お喋りを楽しみながら働くおばさんの姿がありありと目に浮かぶようだ。


それにしても、種だけ寄越されて、「こういうささやかな花」なんていきなり言われたってわかるわけがないじゃない。


興味がないって言いながらも、気付くとあたしは、


「……何の花の種なんですか、これ」


と、口を尖らせながらもそう訊ねていた。




forget-me-notの最初へ forget-me-not 110 forget-me-not 112 forget-me-notの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前