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イグアスの滝に蝶が舞う
【その他 官能小説】

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イグアスの滝に蝶が舞う-1

1.
轟々と地鳴りを伴って落下する激流の響きが、熱帯雨林を縫って流れてくる。
日没には未だいささかの時間があるが、天空を覆う大樹に囲まれて、この辺りは薄暮の様相を呈している。三抱えもあろうかと思われる大木の下草は、太陽を奪われた雑草が、かろうじて緑のラグの様に地表を覆う。
その上に、ビニールの雨除けコートを敷いて、アナマリアとカルロスは並んで身を横たえている。
カルロスは、半身を起こすと、アナマリアに覆いかぶさり、唇を吸った。迎えるアナマリアは、両腕をカルロスの背中に回し、ヒシと抱きしめた。
(気持ち好いわ、こうしてカルロスと抱き合っているのが一番好き)
アナマリアは、乳房から腹、下腹、腿に、カルロスの体重を感じて、幸せだった。
頬を寄せるカルロスの首筋から、甘い汗の匂いが漂い、鼻腔をくすぐる。
カルロスの指が、ブラウスの胸元を掻き分け、左の乳首に延びる。疼きがジュンと四方に流れて、アナマリアはこれから起こるカルロスとの愛の交歓を思うと、体中の神経がウルウルと疼く。
(ああぁ・・カルロス、私のカルロス、愛しています。あなたが欲しい)

カルロスとアナマリアは、共にアルゼンチン国の首都、ブエノスアイレスに生まれ育った。
カルロスは、フィアットの現地工場に勤める技術者。 アナマリアは、大学を出たばかりで、就活中。
 前世に、赤い糸で結ばれた2人は、ミロンガ(タンゴのパーティ)で出会い、共に一目ぼれ、婚約を済ませ、婚前旅行にイグアスの滝を選んだ。

2.
世界最大の滝と言えば、誰でもカナダのナイアガラを思い浮かべる。 が、南米大陸、アルゼンチンとブラジル、パラグアイ3国の国境に挟まれたイグアスの滝は、高さにおいてはナイアガラに及ばないが、幅とスケールの大きさでは、まさに世界一と言えよう。
ブエノスアイレスから北に直線距離で約1000キロ。 パラナ河の上流、亜熱帯に属するこの地域は、かつてアメリカ映画「ザ・ミッション」の舞台となった、ガラニ族の土地であった。
イグアスは、ブラジル側から見た方が景色がいいからと言われ、この地域最大のHotel Karimaに部屋を取った。
翌朝、ホテルのロビーは、迎えに来る観光バスを待つ旅行者で、溢れていたが、一組二組と出かけて行き、アナマリアとカルロスの二人だけが取り残されてしまった。 これはおかしいと気がついたカルロスは、ホテルの受付に事情を話すと、一寸待ってくれと言う。
やがて、アメリカ車のハイヤーが現れ、別のホテルのロビーにある観光案内所に連れて行かれた。
この会社は、別の会社だから、観光の手配はするけれど、別料金になると言う。ここでゴタゴタ言っても時間の無駄になるだけなので、そこで用意をしてくれたハイヤーカーで出かけることにした。運転手付きの大型のアメ車である。水に濡れるからと言って、透明ビニールのレインコートを貸してくれた。
しばらく走ると、道端に車を止め、これから先は歩いて行けという。一面の湿地帯で、板掛けの歩道が渡り廊下のように走っている。その向こうから、飛沫に濡れたコートを羽織った観光客がぞろぞろと帰ってくる。
その観光客と入れ替わる形で、二人は足元に気を配りながら、先へ進む。
やがて、ゴウゴウという音と共に、下から水煙が立ち昇るのが見えてきた。板掛け道の先端は、滝の真上で途切れていて、その先は地獄の釜の蓋を開けたような凄まじい轟音と、水煙である。地元の人はGarganta del Diablo 悪魔の喉と呼ぶ。
立ち上った水煙は、夕立のような雨しずくとなって、降りかかる。高所恐怖症のカルロスは、アナマリアを促してそそくさと逃げ出した。
ハイヤーの運転手は、陽気な若い兄さんで、いいところに連れて行くという。ついたところは、屋内競技場ほどもある、土産屋であった。その兄さんが、自分が見ているから荷物は置いたままでいいというので、カメラなどの手回り品を座席に置いたまま、店内に入った。
どこにでもある典型的な土産品が積んである。時間つぶしにぶらぶらと見ていると、後ろで聞いたような声がする。 あれっと振り返ると、車にいる筈の例の運転手が、店の若い女店員と大声でおしゃべりをしている。 あわてて車に戻ってみると、座席に置いたカメラはそのままに、車は窓ガラスを開け放しにしたまま。


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