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泥棒シンデレラ
【女性向け 官能小説】

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逃せないチャンス-1


 二人がが付き合い始めて、三ヶ月の時間が流れたある日の事だった。
夕飯を終え、部屋でくつろいでいると、万優子が私の部屋のドアをノックして。

「舞ちゃん…、ちょっといいかな…?」
「どうぞ…」

 ドア越しの万優子の声はとても沈んでいて、何事かとドアを開けたら、

「舞ちゃん…、私…もうダメかもしれない…」
 憔悴した顔でそう言いながら、私にしがみつき泣き出してしまった。

「万優子…」
「秀明と、ケンカしちゃったよぉ…。もう私達…きっと終わりだ…」
「…落ち着きなよ。ゆっくりでいいから、なにがあったのか話して…」
 泣きじゃくる万優子の肩を擦りながら、私は浮き立つ心を悟られぬよう、二人がケンカした理由を探った。

「秀明に…私が浮気してるんじゃないかって疑われて…、電話にも出てくれないし、メールも返ってこないし…」

 話を聞くと、ケンカの原因はどうやら万優子が始めたファミレスのアルバイトらしく、万優子がバイト先の同じシフトの男の子の話をしたら高科君が不機嫌になり、浮気を疑われる言葉をぶつけられて、口論になってしまったようだ。

「私はなにも疚しい事がないから秀明になんでも隠さないで話してたつもりなのに…、秀明は、なんで一々バイト先の男の話をオレにするんだって…。オレよりその男と一緒にいることのほうが楽しいんだなって怒りだして…」

 互いの信頼を大切にする万優子らしい考え方だ。だけど、知りたくない事、敢えて黙っていて欲しい事ってものもあるでしょ…。
 万優子の話を聞いていたら、高科君があからさまに焼きもちを妬いてるって理解できて、なんだかケンカ話ではなく、のろけ話を聞かされてる気分になって心の中で私はとても苛々してた。

 万優子は嫉妬なんてした事、ないんだねきっと。
高科君を誰かに奪われるかもって怖さは持ってないんだ…。

 おめでたいヤツだね…。ムカつく。

「ねえ、万優子…」

 私は、万優子にひとつ提案をだした。

「私が、高科君と万優子の仲直りの橋渡しを手伝うよ。二人がケンカしてる状態では、講義で顔を合わせるのもなんだかぎこちなくなって辛いし、何より二人には幸せになって欲しいし…」

 小さく笑って万優子を見たら、

「舞ちゃ〜ん…。ごめんねぇっ! ありがとうっ! 本当にありがとうっ!」

 私に抱きつき、何度も感謝の言葉をこぼした。
そんな万優子の頭を撫でて、

「万優子、明日は大学休みなよ。きっと今日の明日じゃ万優子も高科君も顔を合わせたら冷静で要られなくなるでしょ?」

「うん…。きっとまた言い合いになっちゃうよね…」

「明日は私が万優子がどれだけ高科君の事を大切に思っているか、私がしっかりお説教して仲直りするように説得しておくから。万優子は私が連絡するまで一切動いちゃダメだよ?」

「わかった。舞ちゃんの言う通り、明日は家で待ってる」

「うん。きっと明日は万優子に吉報を届けるよ」

「ありがとうっ! 舞ちゃんっ!」

 幸せそうに泣いて喜ぶ万優子を見て、私は心の中に湧いた黒い感情に包まれ、思わず口元が緩んだ。


 明日は高科君と二人きり。そう思うと心が躍る。

 仲直り? いいよ、させてやるわよ。

 だけど、タダでは嫌よ…。

 今までアンタの陰になり悔しい思いをしてきた私にだって、幸せな時間を味わう権利はあるでしょ?

 それが間違った行為だとしても、私はきっと後悔しない。そう心に思った。
 


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