サキュバス・ネスト-1
吟遊詩人は歌う――ここは剣と魔法の世界、と。
でもそれは遠まわしに言ってるだけで、実は‘股間の’剣と‘性’魔法でエッチな魔物と戦う――そんな世界のおはなし。
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(ここ、かな…。)
――はじめてスライムと‘戦って’から1ヶ月。
とりあえず城の周りで経験値をかせいで、レベルもいくらか上がった。もう、ドラキーくらいなら問題ないと思う。
そろそろ次の町を目指そうかな――そう思っていたときに、他の勇者からここの事を聞いた。
(おっきい・・・。)
やってきたのは、街外れの洋館。といっても全然さびれてはいなくて、入り口あたりは人でごった返している。
(ここが、娼館・・・。はじめて来た…当たり前だけど。)
――魔物が人を‘襲う’ようになってから、風俗業の位置づけは一変した。
お金と引き換えに悦びを売る‘汚い’商売でしかなかった娼婦が、魔物にも対抗しうる性技をもった人たちとして、急に一目置かれるようになったのだ。
風俗のお客も、日々の息抜きや娯楽目的の男たちはもちろん、商売柄どうしても旅をしなければならない商人や、駆け出しの勇者、果ては‘護身術’として女たちまで、娼館に性のレクチャーを受けに来るようになった。
そんな時代の流れを受けて、国も風俗業をおおっぴらに認めて、質の高い娼婦を抱える館を‘王定娼館’に指定、いろいろ便宜をはかる代わりに、特に勇者に対しては割安な値段で‘レクチャー’を行うことになっている。
――新米勇者は、ここ王都の指定娼館で‘腕試し’をして、次の町へ旅立つ…それが、一種のならわしになってるらしい。
確かに、今の自分がどこまで通用するか試してみたいし、さいわいレベル上げのおかげで、少しはお金にも余裕がある。
(…とにかく、入ってみよう。)
娼館という場所がはなつ独特な雰囲気にどぎまぎしながらも、私は入り口へと流れる人ごみにまぎれていった。