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しあわせの衣擦れ
【熟女/人妻 官能小説】

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try again-2

麻実が千恵の家に不動産屋の男を連れて来る数日前の出来事である。東海地方に梅雨明けが宣言され、一気に青空が広がった日であった。一人の男が小夜子の店を訪ねた。

「こんにちは、少しいいですか?」まだ店は営業していない昼下がり。

「どなた?まだ店開けてないんだけど。」仕込み途中の小夜子は答えた。

「はい、すみません。ここに来ればある人に出会えると思って来たんです。出直した方が良さそうですね。」男の態度は紳士的だった。

「どなたをお探しなの?」小夜子は何かを感じた。小夜子の勘は良く当たる。

「千恵さんという女性を捜してます。小夜子さんのお店に行けば会えると聞きました。」

「千恵ちゃん?どういう関係かしら?千恵ちゃん人気があるから結構探してる人がいるのよ。あなたは?」

「親しい間柄というか・・・」小夜子は確信した。「この子ね。確かにいい子だわ。」礼儀正しい男の姿に千恵の彼氏とわかった。

「逢ってどうするの?三年でしょ?」

「えっ、あなたが小夜子さんですか?すみません。その節は大変お世話になりました。」男は深々頭を下げ、礼を言った。

「三年経てば色々あるじゃないの、普通は。逢ってどうするの?」

「判りません。逢ってから考えようと思ってました。今度辞令で転勤します。実家のそばなので、通例だと定年まで転勤はありません。元々その支店に配属を希望していたので、自分的には問題ないのですが、千恵さんの事が大きく心にあるのです。彼女とは今まで通り普通の生活を約束したんですけど、嫉妬心でやっぱりキツいです。」

「お別れ、って事?」

「かもしれません。約束通り心の中にいつも千恵さんがいるのですが、三年経てば千恵さんの気持ちもあるでしょうから。」

「ふ〜ん。転勤はいつ?」

「秋から新プロジェクトが始まります。プロジェクトの課長としての栄転なので、夏休みには引っ越しをしようと思ってます。」

「千恵はね、早くに両親を亡くして、一人で頑張っていた時に、あの獣みたいな旦那に捕まって、籍入れさせられて、以後、必死に生きてるの。周りから見れば汚らわしい生き方に思えるかもしれないけど、私には輝いて見えてるのよ。あなた決心出来るの?」

「そうでしたか。決心?そうでした、ありがとうございます。」男は何かに気がついた。
「では引っ越す前にもう一度来ます。必ず決心して。」そう言って男は帰っていった。


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