やっぱりアイツはズルい男-8
「いったー……」
慌てて膝の辺りに手をあてると、逆剥けた皮と貼り付いた砂ぼこりのざらついた感触。
ひんやり湿ったアスファルトに、ぺたんと座り込んだあたしは、そのままうずくまった。
見れば膝は擦りむいて、うっすら血が滲んでいる。
「……痛い」
痛いよ、陽介。
ポツ、と落ちた雫がアスファルトに濃いシミを作った。
「痛いよ……」
足が痛いのか、何が痛いのか、もう自分でもわからなかった。
ぶわっと溢れる涙は止まらず、次々と頬を伝っては落ちていく。
何でお礼なんて言うのよ。
あたしと出会ったことを後悔してくれた方がどれだけよかったか。
ホントはあたしだって言いたかったよ。
ありがとうって。大好きだって。
なのに、先に自分だけ言ってスッキリしちゃって。
あたしには、忘れられなくさせて。
やっぱりアイツはズルい男。
「陽介のバカヤロー……」
だけどこみ上げてくるのは怒りなんかじゃなく、ひたすら流れる涙は悲しみだけでもない。
最後に「ありがとな」って言ってくれた陽介の声が、震えていたこと。それを思い出すと、自分でもよくわからない不思議な気持ちが胸をキュッと締め付けた。