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forget-me-not
【女性向け 官能小説】

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やっぱりアイツはズルい男-7








「はあっ、はあっ……」


汗ばむ身体。切れる息。生ぬるい夜風。


こんなに一生懸命走ったのは、高校の時以来かな。


気がつけば無我夢中で、そろそろ寝静まろうとする街の中を走っていた。


ラフなルームウェアに、8センチはあるヒールの華奢なデザインのサンダル。


こんなとんちんかんなカッコで泣きながら走るあたしを、すれ違う人はどう思うだろう。


だけど、あたしは走り続けた。






陽介の最後の言葉、


“ありがとな”


それがさっきから頭の中にこびりついて離れない。


ねぇ、陽介。あれは、どういうつもりで言ったの?


今まで都合のいい女でいたこと? 恵ちゃんとやり直したい陽介の背中を押したこと? 身を退いたこと?


考えても考えてもわからないのに、その言葉を聞いた瞬間、涙が勝手に流れ落ちてきたんだ。


だから、あたしは陽介に気付かれないように逃げた。


久しぶりの全力疾走は、やけに堪える。


肺がヒューヒュー鳴って、足の裏がジンジン痺れてくる。


雑念を振り払いたくて無心になろうとするけど、次から次へと陽介と過ごした日々が勝手に浮かんでくる。


初めて出会った日、一緒に食べたラーメン。


夜通しやり続けたゲーム。


スグルと別れたことで、始まった身体の関係。


ホントは心まで欲しかった、快楽を求めるだけのセックス。


色んな陽介の顔が浮かんでは一つ、また一つ、消えていく。


お願いだからあたしの頭の中から出ていってよ……!


苛立ち混じりに舌打ちをし、腕でゴシゴシ目元を擦っていると――。


「ひゃっ……!」


高いヒールのせいか、バランスを崩したあたしは足がもつれ、次の瞬間、あたしはアスファルトに叩きつけられるみたいに、思いっきり転んでしまった。





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